日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (103)

Q:

最近高速道路の側壁に円筒状のものがついていますが,どういう原理で遮音しているのでしょうか? また,壁の高さに換算するとどのくらいの効果があるのでしょうか?

A:

防音壁とも呼ばれる障壁は,騒音の伝搬を制御するための基本的な方法の一つです。道路交通騒音の制御における障壁では,近年の交通量の増加などに伴う騒音レベルの上昇に対処するために,高さを上げることが多く行われてきました。この方法は確かに有効なのですが,その構造的な強度の問題や,景観に及ぼす影響など,本来あまり望ましいものではありません。そのために,障壁の高さを上げることなく,遮音性能を向上する方策を見つけることが現在の急務となっています。今回ご質問の「円筒状のもの」も,その方策の一つで,吸音性円筒,あるいはノイズリデューサやハイシャットという商品名で知られています。断面形状も,本当の円筒状のものから,マッシュルームのような形まで,幾つか存在します。
 障壁を乗り越えて伝搬する,いわゆる回折音は,あたかも障壁の頂上部分から放射されるように振る舞います。障壁のエッジが仮想的な音源のようにみなせるのです。吸音性円筒は,この仮想的な音源に吸音材を配置することで音圧を減少させ,結果的に障壁背後での減衰量を向上させるものです。仮想的な音源対策といって良いでしょう。この方法は,受音点から音源が直接見通せないような位置,つまり障壁による影の領域において効果を発揮します。大規模な実験の結果,約2dB程度の遮音性能向上が確認されており,これは受音点位置にも依存しますが,通常では障壁の高さを1mほど上昇させたのと同じ効果です。
 また,障壁のエッジの音圧を減少させる方法は吸音性円筒のみではなく,他の方式も試みられています。1/4波長の音響管をエッジ部分に設置して,表面音圧がゼロのエッジを実現するソフトエッジや,付加的なスピーカを設置して能動的にエッジでの音圧を消去する方法などです。それぞれの方法に一長一短がありますが,いずれにせよ,仮想的な音源とみなせるエッジの音圧を減少させる方法は有効だと思われます。

(藤原恭司:九州芸工大)