日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (108)

Q:

「ソノルミネッセンスとはどのようなもので,どのような応用分野があるのでしょうか?」

A:

超音波を利用したメガネの洗浄機は,ご存じの方が多いと思います。水を満たした容器にメガネを浸して,超音波を照射すると洗浄される,というものです。
 超音波は圧力の振動が伝搬する波ですので,本格的な洗浄機のように圧力振幅が1気圧を超える超音波を照射したときは,液体中に瞬間的に“負の”圧力が働く場所が生まれます。“負の”圧力とは,液体を周りから押しつぶそうと働く正の圧力とは反対に,液体のその部分を周りから引き裂こうとする圧力です。この“負の”圧力によって,液体中に溶けていた気体が多数の気泡として現れます。これをキャビテーションといいます。発生した気泡は,超音波の圧力振動に伴って,圧力が下がった時には膨張し,上がった時には収縮します。気泡の収縮は非常に速く,熱の出入りのほとんどない断熱過程となります。そして,収縮が進むにつれて気泡内部の温度は数千度を超え,収縮の最後の段階で気泡は発光します。この発光現象を,ソノルミネッセンスといいます。ソノルミネッセンスの発光は極めて弱く,暗闇に十分目を慣らした後でないと,なかなか肉眼で確認することは困難です。一眼レフカメラでは,1時間近く露光すると綺麗に撮影することができます。
 ソノルミネッセンスの中に,肉眼で容易に見ることのできる明るいものがあります。1989年にアメリカで発見された,単泡性ソノルミネッセンスです。これは,液体を満たした容器中に超音波の定在波を作り,その圧力の腹に気泡を一つだけトラップして,発光させるもので,気泡の寿命が長く気泡が一点にとどまって動かないために,肉眼で容易に見ることができます。先に述べました多数気泡からのソノルミネッセンスは,1933年に発見され多泡性ソノルミネッセンスと呼ばれているのですが,気泡の寿命が短く更に気泡が超音波の放射力によって動き回っているため,気泡の一つ一つを確認することは難しく,液体全体がぼうっと光っているように見えます。
 ソノルミネッセンスの発光を,直接利用した応用例はありません。しかしながら,気泡内部で水蒸気から生成するOHラジカルや過酸化水素などの強い酸化剤を利用して,排水処理を行おう,という試みがあります。排水中の難分解物質などが,その強い酸化剤によって分解されます。

(安井久一:産総研)