日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (109)

Q:

携帯電話でエコーが聞こえるのは何故ですか?

A:

ハンズフリーでない通常の通話に限定した私自身の経験では,携帯電話間の通話でエコーが聞こえたことがあります。これは,ほぼ同じレベルで連続して聞こえるもので,そのときの通話が終了するまで続きました。
 エコーは,回線エコーと音響エコーに大別することができます。携帯電話間は送受信で別の回路を利用する(4線式通話)ので,2線4線変換部で生じる回線エコーではないと考えられます。携帯電話の音響エコーは,スピーカからマイクロホンへ,信号が音響空間を経て回り込むことによって発生します。このような回り込みは,音響空間ばかりでなく,携帯電話筐体を伝搬する振動やマイクロホン・イヤホンジャックなどにおける電気的結合などによっても生じます。また,エコーの大きさは,スピーカから放射される音の強度やマイクロホン感度,あるいは携帯電話と顔との位置関係にも影響されます。音響エコーを消去するシステムとして,音響エコーキャンセラが知られています。エコーキャンセラは,スピーカに供給される信号を入力としてエコーにそっくりな信号(擬似エコー)を作り出し,これをエコーから差し引くことでエコーを消去します。擬似エコーを作り出す回路は適応フィルタと呼ばれ,消し残したエコーが最小化されるように,逐次的に内部パラメータの値を調整します。音響エコーの問題はよく知られているので,ハンズフリー端末には音響エコーキャンセラが備えられています。しかし,通常の通話だけを想定している携帯電話には,音響エコーキャンセラが備えられていないのが普通です。通常通話では,スピーカが耳で塞がれるために,スピーカからマイクロホンへの音響空間結合は極めて弱くなります。しかし,上述の筐体振動やマイクロホン・イヤホンジャックにおける電気的結合の影響が現れると,エコーが聞こえることがあります。すなわち,相手の携帯電話まで往復することによって遅延した自分の声が,エコーとして聞こえるのです。また,これらの結合の強度は,スピーカ音量やマイクロホン感度などに影響され,常に一定ではありません。これからは,エコーが聞こえたときの条件を記録し,何がその真の原因かを探してみませんか?

(杉山昭彦:NECマルチメディア研)