日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (112)

Q:

研究用に自由に使える音楽のデータベースはあるのでしょうか?

A:

あります。
 例えば,2002年から利用可能になった「RWC (Real World Computing)研究用音楽データベース」(以下,RWC-MDB)は,研究目的での自由な利用のために構築された世界で最初の大規模な音楽データベースです。RWC-MDBには,楽曲データベースとして,ポピュラ,クラシック,ジャズ等の多様な音楽ジャンルの楽曲315曲,楽器音データベースとして,ピアノやバイオリン等の約50種150個体の楽器の演奏音が収録されています。すべての楽曲に,コンパクトディスク(CD)に収録された音響信号,楽曲を可能な範囲で再現する標準MIDIファイル(SMF),歌詞のテキストファイルが用意されています。
 音楽に関連した研究を進める上で,自由に利用できる音楽データベースは重要な役割を果たします。例えば,様々な研究者が,個々のシステムや手法を適切に比較・評価するためには,ある楽曲集をベンチマークとして共通に利用することが必要です。統計的手法や学習手法を活用した研究でも,一定規模のデータベースが必要となります。更に,研究成果を学会等で対外発表する際にも,自由に音楽を利用したいことがあります。以上は主に音楽情報処理の観点からの利用法でしたが,音楽心理学,建築音響等の観点からも,共通利用・学術利用の自由が確保された研究用の音楽データベースは有用です。音声や画像に関しては,古くから多様なデータベースを構築する努力がなされてきましたが,共通の楽曲データベースは,RWC-MDBより前には存在していない状況でした。
 普段私たちが耳にする市販のCD等による楽曲の多くは,著作財産権,著作者人格権,著作隣接権等の制約のため,世界中の研究者が自由に使うのは困難です。例えば,研究成果の発表で,楽曲をサンプルとして用いたシステムのデモンストレーションを,WWWに掲載したり学会発行のCD-ROMに収録したりする際には,著作財産権が関係します。著作財産権の保護期間が終了したクラシック音楽等を用いたとしても,近年の録音物は著作隣接権(演奏家や歌手,レコード製作者等のための権利)で保護されています。RWC-MDBでは,こうした問題を克服するために,著作財産権の保護期間が終了した一部の既存曲以外は新規に作曲,作詞,編曲され,すべての楽曲が新規に演奏,歌唱,録音されています。
 このほかにも,楽器音データベースに関しては,McGill University Master Samples,Iowa Musical Instrument Samples等が公開されています。
 以上紹介したデータベースの入手案内は,WWWサーチエンジン等で検索するとアクセスできます。今後,ますますこうした研究用音楽データベースの構築・利用が増え,それに基づいて研究が大きく進展していくことでしょう。

(後藤真孝:産総研/科技団さきがけ研究21)