日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (114)

Q:

超低周波音で苦情が出る場合があると聞いていますが,普通の人が聞こえない低周波音に対して感度が高い人で問題となるのでしょうか?

A:

まず,低周波音,超低周波音の定義ですが,超低周波音は周波数20Hz以下の音波と定義されており,低周波音は低周波数の可聴音と超低周波音を含む音波と定義されます。何ヘルツまでを低周波音とするかは国によって違いますが,日本騒音制御工学会や環境省ではおよそ100Hz以下を低周波音とし,測定法を定めています。低周波音の閾値の音圧レベルは周波数によって大きく変化しますが,一般にラウドネスのダイナミックレンジが狭く,音の圧迫感や振動感を伴うので,閾値より少し上で不快を感じる傾向があります。ところで,周波数が20Hz以下の超低周波音は普通の人には聞こえないはずなので,それで苦情が出るのは特別な感度を持つ人だけの問題なのでしょうか。答えは否です。確かに,人が聞くことのできる音の周波数範囲は2Hz〜20kHzとされており,一に20Hz以下の超低周波音は聞こえないとされています。しかし実は,20Hz以下の音波も音圧レベルが非常に高い場合には普通の人が感知できるのです。例えば,10Hzの場合,敏感な人では85dBくらいから感じ始め,平均的な人でも95dB前後で感じることができます。感じることができると書いたのは,普通の音とは違って,耳の周りや顎のあたり,頭部などの圧迫感として感じ始め,次第にあるいはほぼ同時に音を伴った感覚が生じるからです。その音も,周波数によって変わり,10Hzではトーナルな音ではなくなります。しかしながら,超低周波音の感覚器官で最も敏感なのは聴覚であると考えられています。その理由は,1Hz近くまで両耳融合が生じること,全身暴露とイヤマフによる閾値が変わらないこと,片耳の閾値から3dBを引いた値が両耳の閾値に一致すること,高度難聴者の場合には超低周波音の閾値が120dB以上になることなどが挙げられます。超低周波音の閾値曲線は20Hzから周波数が低下するにつれてほぼ12dB/octaveの勾配で1Hzあたりまで上昇することが知られており,超低周波音の評価特性であるG特性(ISO-7196)は20Hz以下でこの逆特性になっています。この閾値曲線は,最小可聴値(ISO 389-7)を20Hz以下に外挿した曲線より勾配が緩やかな直線で近似されます。個人差はありますが,標準偏差は5dB程度ですから,閾値の上下10dBの中に95%以上の人の閾値が含まれます。また,経験によって聞き分け易くなり,閾値が低下しますが,この影響はそれほど大きくはありません。むしろ影響が大きいのは,感度よりも許容度で,被害者の場合,実際に測定してみると一般の人に比べて特に閾値が低いわけではなく,感じると同時に許容限度と判断される傾向が見られます。感受性が高くなっていると言えるかもしれません。

(犬飼幸男:産総研)