日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (122)

Q:

テレビで映像と音声のタイミングがずれていることがありますが,何故ですか?また,何か対策は取られているのですか?

A:

テレビや映画で映像と音声のタイミングがずれていることをリップシンク(lip sync)がずれていると言います。アナウンサがニュース原稿を読むときのリップシンクのずれの検知限は音進み約45ms,音遅れ約125ms,許容限は音進み約90ms,音遅れ約185msです。放送局では,リップシンクのずれが家庭のテレビで見て,検知限あるいは許容限の中に収まるように努力しています。テレビで映像と音声のタイミングがずれる理由は大きく分けて三つあります。
第1に,映像を処理する装置には大きな遅延を生じる機器が多いことです。テレビでは映像を1秒間に29.97フレーム(枚)送っているので,1フレームの映像を送るのに約33ms時間がかかります。中継現場や他局からの映像の同期をとる(フレーム数やタイミングを正確に合わせること)ためのフレームシンクロナイザや,ビデオエフェクタ(映像効果機器)などはフレーム単位で処理を行っているので映像がフレーム単位で遅れます。更に都合が悪いことにフレームシンクロナイザによる遅延時間は一定でなく,1フレームの範囲で揺らぎます。映像が家庭に届くまでにフレームシンクロナイザを何度も通ることがあるので,全体として大きな揺らぎになります。映像の遅れに伴う遅延時間は音声遅延回路を用いて補正していますが,音声の遅延時間は固定です。
第2の理由は,中継番組で映像と音声が別々の回線で伝送される場合があることです。海外からの中継で,映像は通信衛星経由で,音声は地上回線経由で来ることがあります。また,極端な例では,映像は地球の西周りで,音声は東周りで来ることもあります。放送局に到達した時点で映像と音声のリップシンクはずれていますが,ほとんどの場合は映像が音声よりも遅れているので,番組が始まる前に音声に遅延回路を入れて必ずリップシンクを合わせるようにしています。しかし,緊急時の中継では放送前にリップシンクを合わせる時間がないこともあります。第3の理由は,テレビ受信機にあります。高級なテレビでフレームメモリを内蔵する機種では,受信機の中で様々な画像処理を行っており,リップシンクがずれることがあります。

(黒住幸一:NHK技研)