日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (123)

Q:

カラオケボックスなどでアンプの音量を大きくすると「キーン」という様な大きな音がスピーカから出るのは何故ですか?

A:

カラオケに限らず,大きな会場でのマイクを使った講演会や演奏会,運動会等の屋外でも同じような現象が起こります。これはハウリング(howling)と呼ばれ「拡声器から出た音が,再びマイクやピックアップから入って増幅され,発振する現象。」であると広辞苑第五版に掲載されるくらいポピュラな物理現象です。音声(音楽)はマイクで電気信号に変換された後,アンプで増幅されスピーカで再び音声(音楽)に変換されて我々の耳に入るのですが,以下に示す二つの条件を同時に満足する形でマイクに再入力されるとハウリングが起きます。「マイク〜アンプ〜スピーカ〜空間〜マイク」で構成される閉じたループのうち,「マイク〜アンプ〜スピーカ」間は電気信号,「スピーカ〜空間〜マイク」間は音響信号となります。
第1の条件は,音は減衰するのでそれを補填する形でアンプで増幅すると言う「振幅条件」,第2の条件は,マイクの振動板を例えば「押す」形で電気信号に変換された信号が回りまわってその振動板を再び「押す」ような音で戻ると言う「位相条件」です。前者は簡単なので省きますが,後者の位相条件についてもう少し説明を致しましょう。
スピーカ〜マイク間の伝搬路に整数倍の波長が存在すると位相条件を満たすことになります。例えば10mの伝搬距離において,たまたま680Hzの周波数でハウリングが生じているとします。音速を340m/sとすると,その音の波長は0.5mとなり10m/0.5m=20,すなわち丁度20波長分の音が存在しているので,位相条件を満たしていたことになります。この値は,25波長でも良く,その場合の発振周波数は850Hzになります。このように位相条件を満足する周波数は沢山あるのですが,閉ループを構成している要素の周波数特性や,音響機器の指向特性等によって,条件を一番良く満足する周波数で発振することになります。
ここで問題です。一定周波数でハウリングが生じているとき,カラオケで手にしたマイクをスピーカから少しだけ離すと発振周波数は高くなるでしょうか? それとも低くなるでしょうか?逆に近づけるとどうなるでしょうか?

(水谷孝一:筑波大学大学院システム情報工学研究科)