日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (132)

Q:

マンションの広告に「高い遮音性能を考慮した二重床・二重天井」と言った旨のうたい文句が書かれている場合がありますが,二重床や二重天井など遮音層が多いほど遮音性能上有利と考えて良いでしょうか。

A:

マンション広告でいう二重床とは一般に建材メーカーから出ているゴム付の支持脚で支えられた床組のことを指しますが,二重床・二重天井と言うように遮音に利きそうな部材がたくさんあったほうがいかにも遮音性能が良さそうに思えてしまいますが必ずしもそうとは限りません。中間に空気層を含む二重遮音構造では空気層がばね,遮音層が質量の共振系を形成します。従ってこの系の共振周波数を中心にした一定の周波数領域では一重の遮音層より性能が悪くなりますが,周波数が高くなるに従って遮音性能は一重の場合より良くなり遮音上有利になる特性を示します。
実際のマンションでもコンクリートの床スラブに二重床・二重天井が施工されると共振系ができます。空気層の厚さ,床や天井に使われる材料の質量,剛性などの影響で多少異なりますが,多くの場合オクターブバンドで63Hz帯に共振周波数が来ます。つまり二重床や天井が付くとこの周波数帯ではコンクリートの床のみに比べ遮音性が悪くなります。一方マンション内で発生する音は,ピアノや特別な音響装置(重低音を出すスーパーウーハーなど)を除くとテレビ,会話などの音ではこの周波数帯の成分があまり大きくないため実質的に共振の影響が問題となることはほとんどありません。またスリッパのパタパタ音や椅子の引きずり音などの軽量床衝撃音についても共振周波数より高い周波数帯に主成分があるため,二重構造が有効に働きます。ところが子供の飛び跳ね音や走り回る音に代表される重量床衝撃音になると話は別です。これらの音は共振周波数の近辺に主成分があるため二重構造が不利となります。実際にタイヤ落下を加振源とした重量床衝撃音を測定するとほとんどの場合二重床や天井が付く事で,これらが無い場合より性能が悪くなることが確認されています。これらの性能を良くするために脚のゴムを柔らかくする,二重床の剛性を高める,空気層を大きく取るなどの方法がありますが,沈み込みやスペースなど他の性能の問題から大きな改善は期待できません。
以上のように二重床・二重天井には一長一短があり必ずしも遮音性能のアップとはなりません。従って床や天井の有無だけでなくこれらの仕様やコンクリート床も含めたトータルとしての性能を想定しているかを確認することが大切です。例えば床の厚さを厚くして一定の性能を確保する等の考慮がされているかといった点も重要な判断材料になります。

(峯村敦雄:鹿島技研)