日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (135)

Q:

最近ICレコーダが普及していますが、メーカや機種により圧縮方式が異なるようです。それぞれの圧縮方式の特徴を教えてください。また、ICレコーダで録音した音を音響分析に利用できますか。

A:

フラッシュメモリ技術や音声圧縮技術の進歩を背景に,最近ICレコーダが普及しつつありますが,大別すると次の2つに分類できます。(1) パソコンと接続可能なタイプ:USBやリムーバルメディア(コンパクトフラッシュ,SDカード等)を介して音声データをパソコンに送受信できます。圧縮形式はパソコンのOSが対応しているMP3(MPEG1 Audio Layer?)やWMA(Windows Media Audio)が主流。録音した音声データをICレコーダを持たない人に送っても再生可能です。帯域が広く高音質ですが,圧縮率はそれほど大きくありません。(2) 主にICレコーダ単体で使用するタイプ:本体付属のスピーカで再生します。圧縮形式は携帯電話に用いられているCELP系が主流(各社の独自方式)。帯域が狭く,携帯電話程度の品質ですが,圧縮率が大きい。
 さて,ICレコーダで録音した音を音響分析できるか? 確かにMP3やWMAはCD並の音質と言われますが,実際にはCDのPCMの信号とはかなり違います。特に次のことに注意が必要です。
 ・MP3,WMAでは,心理的音響モデルを用い,音が物理的には存在しても最小可聴値以下の音あるいはマスキング効果により人間には聞こえない音のデータを省く処理をして圧縮します。そのため,人間が聞いて差がなくても物理的な特性は原音と大きく異なります。
 ・内蔵マイクの周波数特性は必ずしも平坦ではありません。
 ・遠方の音も十分拾えるように,AGC(Auto Gain Control)の利得を意図的にAD変換器のダイナミックレンジを超えるような程度に高めに設定されている場合もあり,波形が歪んでいることがあります。
 これらの点を考慮すると精密な音響分析には向かないというべきでしょう。しかし、メッセージや会議の記録には手軽で便利な機械です。特性を知った上で用途に合わせて有効にご利用ください。

(井上健生:三洋電機)