日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (144)

Q:

神戸に住んでいますが,季節や日によって遠くの港の船の汽笛がよく聞こえる時があります。気象の影響だと思うのですが,気象により音の伝わり方はどの様に変化するのでしょうか。また,どの程度変動するのでしょうか。

A:

遠くの音がよく聞こえる現象は,冬の夜に発生することが多いようです。この理由としては、一般に冬の夜は環境騒音のレベルが低く、日中に聞こえなかった遠くの音でも夜は聞こえるようになると説明されますが,これだけではなく,ご指摘のように冬の夜は気象の影響によって音が伝わり易い条件になることが挙げられます。主な説明要因として1)温度分布,2)温湿度に依存する空気の音響吸収及び3)風があります。それぞれの要因による音の伝わり方について以下に簡単に述べます。
1)温度分布:日中は日射により地面が暖められ,地表近くの音速は高くなります。そのため音は上向きに屈折し音が伝わり難くなります。一方,夜は放射冷却で地表近くの温度が下がり,逆に音は下向きに曲げられ伝わり易くなります。
2)空気の音響吸収:大気中を伝搬する音は媒質である空気の粘性や分子吸収などにより減衰します。空気吸収による減衰が夏季と冬季でどちらが大きいかは,音の周波数によってその変化傾向が異なりますので一言では答えられませんが,日中と夜については,夜のほうが減衰は小さく,音が伝わり易い条件であることはわかっています。
3)風:音源から放射された音は風下側に伝わり易く,風上側には伝わり難くなります。これは地表近くの風速は,地表面上に比べて上空ほど高くなるため音が屈折して伝搬することで説明されます。また神戸のような海岸地域では,陸地と海面との温度差により日中に海風(海から陸に向かって風が吹く)、夜には陸風(陸から海へ)が吹きます。従いまして季節や時間帯による風向きの変化によって音の聞こえ方は違ってくるでしょう。
このような気象の影響による騒音レベルの変動については,気象条件が場所や時間で複雑に変化すること,また各要因が相互に影響し合うことによりまして,その程度を定量的に答えることは難しいです。なお,屋外における音の伝搬実験を行った結果から,風及び温度分布によるレベルの変動幅は,周波数が高いほど,また伝搬距離が長いほど大きく,100m程度の比較的短い距離でも10〜20dB程度,1km程度では20〜30dB程度になると報告されている例もあります。

(岡田恭明:名城大)