日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (148)

Q:

アップライトピアノとグランドピアノのペダルは効果が異なるとききました.この違いは何ですか。

A:

現在のピアノは,多くの場合2〜3本のペダルを持っています。ペダルは音色に変化をつけるためにつけられており,両足を使って操作されます。3本のペダルのうち,右側のペダルはラウドペダルと言って,全ての弦のダンパを同時に開放します。これにより,打弦後に指を離しても音が止まらない効果があり,同時に他の開放弦に共振が起こって音色が変化します。
左のペダルはソフトペダルと言います。アップライトピアノでは,全ハンマの静止位置が弦に近づき,加速距離が短くなることにより音が小さく抑えられます。一方,グランドピアノではソフトペダルを踏むと打弦機構が数ミリ横方向に移動します。普段は一音に対して複数の弦が同時に打たれていますが,打弦機構がずれることによりこのうち一本が打たれないようになり,音色がソフトに変化します。音量も小さくなると同時に,弦間の連成関係が変化し,またハンマが普段と異なる位置で弦に衝突することから,アップライトピアノより音色の変化が大きく現れます。
中央ペダルは機種により省略されることもあります.アップライトピアノの中央は,消音ペダルです。全ハンマと弦の間に大きなフェルトが挟み込まれます。ハンマが一度フェルトに当たって減速されてから弦に衝突することになり,音は小さくなります。また,弦に直接ではなくフェルト越しにあたるので音色も大きく変わります。現在では主に周囲に音を撒き散らさない気配りの機能です.気配りといえば,最近の楽器では,消音ペダルのかわりに,打弦機構が停止してヘッドフォン付きの電子ピアノに早変りする製品もあります。一方,グランドピアノの中央はソステヌートペダルです。ソステヌート(sostenuto[伊])は「音を保持して」という楽語で,鍵を押した状態でこのペダルを押すと,鍵を離してもその鍵だけダンパが解除され,音が鳴り続ける状態になります。
作曲家が各ペダルの使用を指定をすることもありますし,演奏者が工夫することもあります。特に古典的な楽曲では後者が主であると言えるでしょう。ピアノは発明以来,音色も音量も大きく変化していて,ペダルもつねに改良が加えられてきました。昔作られた楽曲の中には,現代ピアノで作曲家の指示通りに踏むと,音楽的に聴くに堪えない場合さえあります。

森太郎(国立音大)