日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (149)

Q:

「人間がどのように感じるか?」を,測定器で測った物理量と関係づけて捉えられれば,音質評価を行う際にたいへん有用だと思います。そのような評価量はいろいろと研究されているのだと思いますが,それらについて簡単に教えてください。

A:

音を評価する場合、これまではA特性音圧レベルやオクターブバンド・狭帯域(FFT)スペクトルなどに代表される物理量による分析・評価が主で、騒音を低減するという観点で用いられていました。これに対し、騒音低減には限界があるので人が聞いたときに気にならない音にすれば良いのではと言う考え方が出てきて、音の聴こえを定量化する音質評価パラメータが順次提案されてきました。音質評価パラメータには、音の大きさに関するラウドネス(Loudness, 単位sone(ソーン))、甲高さに対するシャープネス(Sharpness, 単位acum(アキューム))、ラウドネスの素早い変動(ざらざら感)に関するラフネス(Roughness, 単位asper(アスパ))、ゆっくりした変動を評価する変動強度(Fluctuation strength, 単位vacil(バシル))、純音成分の量に関する調音性(Tonality, 単位tu(ティーユー))などがあり、これらの基本パラメータから二次的に導出される好ましさ(Sensory pleasantness)や不偏アノイアンス(Unbiased annoyance)なども提案されています。ラウドネスは最も基本的な評価パラメータで、ISO532として規格化されていて2つの計算方法(AとB)が記載されています。この内、ミュンヘン工科大学(ドイツ)のツビッカー教授が提案した、臨界帯域の概念を元にしたラウドネスの計算方法(532B)がよく使われ、色々な周波数成分を広く含む騒音の大きさと良く合うと言われています。ただし、これは定常音を対象とする場合に限られていて、変動音には適用できません(現在、規格化が進められています)。このように最も基本的な評価パラメータであるラウドネスでも、研究・改良が進められているところであり、ラウドネス以外の評価パラメータに関しては更に複雑で決定的なものではありません。計測機器メーカから、これら音質評価パラメータを算出する装置が幾つか販売されていますが、その計算手法は各社によって少しずつ異なるため、同じ音を分析しても異なる値となることがあります。なお、音質評価に関して総合的に学ぶには「E. Zwicker and H. Fastl, “Psychoacousitcs Facts and Models,” Springer-Verlag」が良いでしょう。

大橋正尚 (小野測器)