日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (151)

Q:

“音の強さ”と“音の大きさ”の違いについて教えて下さい。

A:

“音の強さ”と“音の大きさ”は,音圧レベルと騒音レベル,あるいは反響と残響,遮音材と吸音材等と同様に混同されがちですが,それらの違いを理解しておくことは,音響を勉強していく上できわめて重要です。
 “音の強さ”は“音響インテンシティ(SoundIntensity)”とも言われ,音場内の1点において,単位面積を単位時間に通過する音響エネルギ−のことを言います。量記号にはI,またはJを用い,単位記号はW/m2,ベクトル量です。一方,“音の大きさ”は“ラウドネス(Loudness)”とも言われ,音の感覚的な大きさを表す心理尺度を言います。
JISによれば“音の大きさ”は,「音の強さに関する聴感上の属性」と定義されていますが,“音の大きさ”は“音の強さ”だけでは決まらず,周波数スペクトルや時間構造にも依存することから,より一般的に感覚的な音の大きさを意味すると考えられます。
 また,“音の強さ”を測定する方法としては,近接した2点の音圧の差分から粒子速度を近似し,それと音圧との積の時間平均として求める方法(2マイクロホン法)がよく用いられます。平面進行波については,“音の強さ”のレベル(音響インテンシティレベル)と音圧レベルはほぼ一致した値となります。一方,“音の大きさ”を表す物理量としては,様々な量が提案されてきていますが,マスキングや臨界帯域などの概念を考慮した非常に精緻なモデルにより算出するE. Zwickerによるラウドネスレベル(LL(Z))が種々の変動音について聴感と対応がよいことが知られています。最近では,橘らにより提案されたオクターブバンドごとの音圧レベルの算術平均値が,様々なスペクトルをもつ環境音について,LL(Z)と同程度に聴感と対応がよいことが示されています。また,音圧レベルにA特性の周波数重み付けをした騒音レベル(A-weighted sound pressure level)は,種々の周波数スペクトルをもつ音に対する“音の大きさ”を近似的に評価するための量であり,各種の騒音評価尺度の基本量として国際的に広く用いられています。ただし,騒音レベルは,例えば演奏音等に対しても“音の大きさ”を簡便に評価する量として用いることができますが,演奏音の騒音レベルという表現は適切でない場合が多く,その場合にはA特性音圧レベルという表現を用います。

横山 栄 (千葉工大)