日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (153)

Q:

スピーカユニットの周波数特性は,取り付ける箱の形によって変わりますが,正しい測定はどのようにして行うのでしょうか。

A:

スピーカユニットは単体では振動板の表と裏に音が打ち消しあうので,必ず箱 (時には後を閉じていない板) に取り付けて用いられます。これを音響負荷と呼びます。
  箱の中の空気のスチフネスが振動板の共振周波数に影響し,また箱や板の形や寸法により音の回折効果が異なるので,周波数レスポンスの形はおっしゃるとおり音響負荷の条件により変化します。ユニットの測定や評価ではこの条件を一定にする必要があります。
  ユニットの製造者が専用の音響負荷の条件を指定しているときにはそれに合わせればよいのですが,指定のない場合も多いので,国際規格 IEC 60268-5 "Loudspeakes" では,製造者が指定していない場合にはこれを使う,という標準の箱 (2種) 及び板を規定しており,JIS C 5532「音響システム用スピーカ」など多くの国の規格も今後これに合わせることになっています。
  TYPE A と呼ばれる箱は間口 94 cm,高さ 124 cm,奥行 64 cm,容積約 600 l と大型の直方体の密閉箱で,左右の中央で上辺から 48 cm の箇所にユニットの中心を合わせて取り付けます。40年以上にわたり JIS に規定されて国内で使われていたのですが,2003年に IEC 規格に規定されて国際標準に昇格しました。かどが直角なので回折効果によるレスポンスの変化が起こるのですが変形の再現性がよいので補正可能であり,物理特性の測定に適当なものと見なされています。測定用マイクロホンはユニットの正面軸上 1 m に置くのが標準です。
  TYPE B と呼ばれる箱は間口 70 cm,高さ 83 cm,上部奥行 86.6 cm,底部奥行 108.8 cm,容積約 450 l の横から見ると台形の密閉箱です。やはり 2003 年にフランスの提案により IEC 規格に加えられました。正面のへりに半径 10 cm の曲面を設けてあるので回折効果が発生しにくいとされ,主観評価に向くと見なされています。
  この他に,間口 135 cm,高さ 165 cmで,ユニットを中心から外れた位置に取り付ける平板が古くから IEC 規格に記載されています。裏からの音の回り込みのため周波数レスポンスが複雑になり,測定距離による変化も大きいこと,左右非対称なので指向特性の評価が難しいなどの理由であまり用いられていないようです。
  上記の IEC 規定の箱や板は携帯電話機,ポータブルオーディオなどに用いられる直径 2 センチ程度以下の小型スピーカユニットの評価には大き過ぎ,実際の使用条件と合わず取り扱いも厄介なので,日本の JEITA (電子情報技術産業協会) では小型スピーカ測定技術の標準化作業の一環として,小型の箱のほか管による音響負荷も比較検討しています。規格化するときには IEC に提案し,国際規格とすることになるでしょう。

大賀寿郎 (芝浦工大)