日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (157)

Q:

ランジュバン振動子という超音波振動子があると聞きました。これはどのようなもので,どのような特徴があるのでしょうか。

A:

ランジュバン振動子はフランスの Paul Langevin が発明した超音波振動子です。ランジュバンは,師であるピエール・キュリーの発見した圧電現象(歪を与えると電圧を生じ,逆に電圧を印加すると歪を生じる現象)を利用したランジュバン振動子によって水中に強力な音波を放射し,物体からの反射波の受信に成功しました。タイタニック号の遭難,潜水艦の登場など,水中探査技術の開発が急がれた時期でした。これが SONAR (Sond Navigation and Ranging) 技術の幕開けですが,超音波応用技術の夜明けでもあります。圧電効果は今日まで超音波の発生・検出に広く使われていますが,強い超音波の発生と高感度な検出には,振動子の寸法で決まる共振を利用する必要があります。顕著な圧電性を示す水晶などは寸法が小さいので,水中をよく伝搬する数 kHz から数十 kHz の低周波では使いにくいのです。そこで,小さな水晶でも,それを二つの金属ブロックで挟んだサンドイッチ構造とすることで全長をかせぎ,低い周波数で共振するようにしたのがランジュバン振動子なのです。今日では,天然水晶に代わってドーナッツ形の圧電セラミックスが使われ, 二つの金属ブロックを貫通ボルトで締めつけた「ボルト締めランジュバン振動子」が用いられています(図-1)。ボルトで締めることで,引っ張り歪に弱い圧電セラミックスでも大振動振幅に耐え,頑丈な高出力振動子として動作します。200 kHz以下の強力超音波応用,SONAR などに広く使われており,直径 10 mm以下の小型のものから 60 mm以上の大型のものまで作られています。端部が金属のため,他の振動系にボルト締結で接続できるという応用上重要な特徴があります。なお,ランジュバンは磁性や相対論研究のほか反ファシズム運動などで活躍した人物ですが,本誌44巻に連載解説があります[1]。

文献
[1] 大谷隆彦,“ボール・ランジュバン,行動の人(1-3),”音響学会誌,44,716-717, 805-806, 879-881(1988)


図-1 ボルト締めランジュバン振動子

中村健太郎 (東工大・精研)