日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (158)

Q:

PAについて,その範囲や分類,また家庭用オーディオとの違いを教えてください。

A:

PA とは,Public Address の略で,公共の場や人の多く集まる場で音による案内,講演,音楽などを提供する「拡声」を指します。公衆 (public) に大音量で演説 (address) を届けることからその名がついたようですが,専ら電気的に拡声するので電気音響設備のことも PA と呼ばれます。その規模や目的は様々で,片手で持てる小さなメガホン,教室や会議室などでの講演,デパートや地下街での案内放送,音楽ホールや野外コンサート会場での大掛かりな設備,また法令で義務付けられている非常放送設備なども含まれます。
  むやみに大音量で拡声する単純な PA に対して,コンサートのように多チャンネルかつ音質を追求する "高級な PA" を SR (Sound Reinforcement) と分ける場合もありますが,著者の勤務する会社では,SR も含め拡声全般を広義の PA とし,その中で特に音源と聴衆が同じ音響空間にありハウリングの危険性がるものを SR としています[1]。聴衆の目前で生の音だけでは足りないときの電気的補強を SR,それに対し別室からの放送や,あらかじめ録音したものの拡声などハウリングの心配がないものを狭義の PA とする考え方です。ハウリングが起こり得るような場では,機器や音場について高度な知識と技術を持ったオペレータが常駐し,問題発生時に速やかに対処するという意味で上述の「高級」なイメージとも整合しますね。
  さて,学校やビル,地下街など建物や商業施設の PA では,アンプを置いている制御室から各階のスピーカまで数百メートルものスピーカ線を這わすことがあります。ここで家庭用オーディオと同じ低インピーダンス (4 〜 16 Ω程度) スピーカを用いると,線のループ抵抗が無視できず,アンプ出力の大半が線で消費されたり,多数のスピーカを並列接続することで合成抵抗が小さくなり過ぎ,アンプに過大な負荷をかけたりしてしまいます。その問題を回避するのが,トランスを用いたハイ・インピーダンス接続です。アンプの出力電圧をトランスで昇圧して伝送し,スピーカ側トランスで元の電圧に戻します。インピーダンスが高いので,ループ抵抗の影響を小さくできます。
  従来の PA は広い範囲に十分な音量で音声を伝えることを第一に考えていた節がありますが,現在は必要とする場所,人,時間を考慮し,不要な人にとって騒音とならないシステムの設計がされつつあります。また,高齢化率が 20 % を超えた我が国では,健聴者だけでなく高齢者の聴こえも考慮した拡声方法の提案が望まれています。

文献
[1] 藤岡繁夫 (編), PA音響システム (工学図書, 東京, 1996).

栗栖清浩 (TOA)