日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (160)

Q:

最近,パソコン用のオーディボードや USB 接続のオーディオ入力機器が比較的安く入手できますが,それを用いて音響測定ができますか? 可能なら,注意点を教えて下さい。

A:

PC 用のオーディオボード等は,計測用の AD ボードに比べて確かに非常に安価です。しかも,異なるメーカの製品であってもプログラミングインタフェースが共通であるため,研究用にソフトウェアをご自身で構築されるような場合でも資産が無駄になりにくいという意味で,十分検討に値します。
  しかしこれらは,あくまで PC の音声入出力用途で開発されたものであるため,音響計測で使用する場合には十分な注意が必要です。注意点は幾つかありますが,大別するとハードウェアに関する点と,PC 側にインストールされるソフトウェア及び OS に関する点があります。
  まず,ハードウェアとしては,ダイナミックレンジ,周波数特性,線形性,自己雑音レベルといった,オーディオ機器,計測器としての基本性能を十分に確認することが必要です。また,ソフトウェアについては,実際に音声を入出力するアプリケーションソフトウェア以外に,PC にインストールされるドライバソフトウェア等の動作にも注意する必要があります。OS 及びドライバソフトウェアの中には,自動的に音声の圧縮・伸長を行ったり,サンプリング周波数を自動的に変換して再生したりするものがあり,機能としては便利なのですが,音響計測用としてのスペックを満たせない場合があるのです。
  これらの実績と過去の経験から申しあげますと,一般的な PC のマザーボード上に実装されているオーディオボードで,音響計測用としての性能・信頼性を持ち合わせているものは,残念ながらほとんどないのではないかと思われます。
  一方,現在では音楽制作も PC ベースで行われることが多くなり,これらを目的としたオーディオボードには,比較的安価ながら音響計測用として十分な性能を持ち合わせているものが多くあります。また,ドライバソフトウェアも,これまでは OS の音声入出力機能を経由した入出力を行っていたものに代わって,OS の音声入出力機能をバイパスして直接データの入出力ができるメカニズムが広く用いられるようになってきています。つまりブラックボックス的な要素が少なくなるという意味で,音響計測を行う立場としては歓迎すべき方向です。また,8チャンネル程度のアナログ入出力に対応したものも多くありますが,チャンネル間の同期や入力感度のパラツキについては,実際の計測前に十分なチェックを行うべきです。
  更に,音楽用途とは別に,計測用のマイクロホン電源を持った AD インタフェースで,PC 用のオーディオボードとして扱えるものも出てきています。こちらはマイクロホンや振動ピックアップを直接接続できますので,用途によっては非常に便利です。

高島 和博 (日東紡音響エンジニアリング)