日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (162)

Q:

道路交通振動や鉄道軌道振動を家の中や地盤上で測定したいのですが,基準化された測定方法はありますか。また,どのようなことに注意が必要でしょうか。

A:

測定の目的によりますが,道路交通振動や鉄道軌道振動の測定では,振動規制法や新幹線振動に係る指針に準拠した測定が行われています。ただし地盤上での測定を前提としており,家屋内の振動測定に関しては,基準化された測定方法はありません。これらの法律や指針に準拠した測定は,排出規制に対応したものであり,規制基準値との整合評価を目的として行われています。測定値は JIS C 1510 に規定される振動レベル計で測定される振動レベル (dB) 「計量法では振動加速度レベル」です。また,評価量は,道路交通振動は 80 % レンジの上限値 (L10) であり,新幹線振動は,上下線連続して通過する20本の振動測定値のうち,上位10本の算術平均と規定されています。在来鉄道も新幹線に準拠した測定が行われています。ただし,測定対象とする列車本数の扱いや,評価量は必ずしも決まっていません。JIS C 1510 には水平方向の振動レベルも規定されていますが,規制基準や指針はすべて鉛直方向を対象としています。そのため地盤上での道路交通振動や鉄道振動の影響調査では,一般に鉛直振動のみが測定されています。 しかし,最近では3階建て住宅など,水平振動の影響が顕著な事例もあること,地盤上での振動レベルの測定結果と家屋居住者の振動苦情実態が必ずしも整合しないことなどから,家屋内を含む,振動を体感する場所における,振動方向によらない振動評価の必要性が指摘されています。
  全身振動の測定に係る規格として,JIS B 7760-1:2004「全身振動−第1部:測定装置」及び JIS B 7760-2:2004「全身振動−第2部:測定方法及び評価に関する基本的要求」が規定されています。前者は ISO/DIS 8041:2003を修正, ISO 2631-2 を参照したものであり,後者は ISO 2631-1:1997 に一致するものです。現在では,これらの規格に準拠した振動計も販売されており,国際規格に準拠した測定評価も比較的容易に行える環境が整ってきています。しかし実務では振動レベル計を使って家屋内での振動測定を行う機会も多く,測定に際しては,絨毯や畳など振動ピックアップの設置共振に特に注意が必要です。
  ISO 規格に準拠して全身振動に係る JIS が制定されましたが,畳やフローリングの床に寝たり,座ったりする日本の生活様式に対応した評価は,まだ十分にできていません。また,これまで,振動レベル計を用いて測定評価してきた過去のデータとの整合に関しても十分な知見は得られていません。多角的な評価を行うためにも,できれば鉛直及び水平2方向の振動加速度の源波形を同位置,同時刻で測定記録しておくことで,振動レベルだけでなく,JIS B 7760 に示されている各種の周波数補正や評価量による評価も行えるようにしておくことを推奨します。

内田 季延 (飛島建設技研)