日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (163)

Q:

コンデンサマイクロホンには,音場型と音圧型の2種類があるようですが,マイクロホンを選択するときにどちらを選べばよいか迷ってしまいます。これら2種類のマイクロホンにはどのような違いがあるのでしょうか。

A:

マイクロホンの感度は,1 Paの音圧がマイクロホンに加えられたときのマイクロホンの出力電圧 (厳密には出力起電力) で定義されます。この "マイクロホンに加えられた音圧" をどのように定義するかにより,音圧感度と音場感度の二種類に分けられます。
  マイクロホンの振動膜面上の音圧に対する出力電圧で定義するのが音圧感度です。測定周波数範囲全体にわたって音圧感度が一定となるような構造に設計したマイクロホンを音圧型マイクロホンと呼んでいます。
  この音圧型マイクロホンを平面進行音波が存在する自由音場に置いたときのことを考えてみます。音の入射方向は,マイクロホンの振動膜面に垂直 とします (正面入射と呼ぶ)。通常のコンデンサマイクロホンは,マイクロホンの口径と同じ直径の円筒形をしたプリアンプと組み合わせて使用します。マイクロホンとプリアンプを音場に置くことにより,反射や回折の影響を受け,受音点の音圧は変化します。マイクロホンなどを置くことによる音圧の変化は,マイクロホンの形状,寸法と音の波長で決まり,公称外径が1/2インチのマイクロホンでは,約20 kHzで受音点の音圧レベルは10 dB近く上昇します。よって,音圧型マイクロホンを使って自由音場での測定をする場合,補正が必要となります。
  このように,音場にマイクロホンを置くことにより音場が乱されることを考慮して,マイクロホンが存在しないときの音場の音圧に対する出力電圧で定義するのが音場感度で,測定周波数範囲全体にわたって自由音場の正面入射での音場感度が一定となるような構造に設計したマイクロホンを自由音場型マイクロホンと呼んでいます。単に音場型といった場合には,通常,自由音場型を指します。
  そこで,イヤホンの周波数特性など人口耳 (カプラ) を使うような測定では,マイクロホンを装着することによる反射や回折の影響がないので音圧型マイクロホンを用い,スピーカの周波数特性など無響室で行う測定では,反射や回折の影響をあらかじめ考慮した音場型マイクロホンを用います。
  ここまで,自由音場の正面入射を仮定して音場感度を説明してきましたが,反射や回折の影響は音の入射角によっても変化します。残響室のような拡散音場では,マイクロホンの音場感度をすべての音の入射方向について積分平均した拡散音場 (ランダム入射) 感度を一定にした方が都合の良いことがあります。通常のコンデンサマイクロホンの拡散音場感度を求めると音圧感度とほぼ同じとてるため,残響室での測定では音圧型マイクロホンを用いることがあります。
  なお,1/2インチマイクロホンで自由音場感度レベルと拡散音場感度レベルが1 dB以上異なるのは,およそ4 kHz以上の周波数です。一般の騒音測定においては,高い周波数成分が顕著でない限り,両者のマイクロホンによる結果はほとんど同じとなります。ちなみに,サウンドレベルメータの国際規格やJISでは,自由音場型マイクロホンを用いることを想定して性能を規定しています。

大八木 敦史 (リオン株式会社)