日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (165)

Q:

オーディオリスニングルーム (今や AV ルーム?) に関する本には,「定在波の発生を抑えねばならない」というようなことが書いてあったり,「特定の周波数で強い共振が発生しないようにしなければならない」というようなことが書かれていたりしますが,これは同じことを言っていると考えてよろしいのでしょうか?

A:

そのとおりです。
  一般に,AV ルームのような閉空間の音場では,その形状や大きさに応じて,放射された音の強さが大きく増幅され易い周波数が複数(理論的には無限に)存在します。その周波数が共振周波数です。共振周波数で強い共振が生じると,音源と受音点間の伝送特性にピークやディップが生じます。AV ルームで聴く音楽や音声は帯域が比較的広いので,その伝送に大きなピークやディップが生じることは好ましくありません。
  また,共振周波数に対応して,音場内の音圧分布の特徴的なパターンが存在します。これも共振周波数と同様に閉空間の形状や大きさで決まり,モードと呼ばれます。モードのパターンは,時間的に変化しません。つまり,モードは閉空間にできる音の定在波のパターンとみなすことができます。ある周波数における音場は,理論的には各共振周波数に対応するモードの重ね合わせで表現されます。音の持つ周波数が特定の共振周波数に極めて近いとき,その音を出し続けてしばらく経った後の定常状態では,共振周波数に対応するモードが音場に非常に強く表れます。音源から放射される音が共振周波数と等しい周波数成分を含んでいると,対応するモードのものが顕著になります。一般的に,モードは音場内に音圧の極端な大小を生じさせます。AV ルームで広い聴取エリアを確保したいときには,モードの影響が顕著になることは好ましくありません。
  前述のとおり,モードは,一般的には閉空間の形状や大きさに依存して生じますが,その中で直観的に分かり易いのは平行な壁面の間で生じるものです。このような場として代表的なものは,「鳴竜」で知られる日光東照宮本地堂(薬師堂)の天井と床です。このような空間で一度手をたたくと,平行な壁面の間で何度も反射が繰り返され,天井に描かれた竜が鳴いているように聞こえることになります。同様の現象は,比較的安価なビジネスホテルの部屋でも耳にできます。この現象はいわゆるフラッターエコーで,一度の拍手で耳にされるものですが,このような空間で音を継続的に放射すると,壁面の間隔を半波長の整数倍とする音が増幅され,それに応じて壁面間に定在波をつくりだします。
  閉空間において生じる「定在波」は音圧分布に,「共振」は伝送特性に影響を与えるものですが,「定在波」と「共振」には対応関係があるため,一方の影響を抑えることは,他方の影響を抑えることにつながります。

高根 昭一(秋田県立大)