日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (166)

Q:

2005年に騒音計の2つのJIS (C 1502, C 1505) が廃止され, 新たに JIS C 1509 シリーズ (サウンドレベルメータ) が制定されました。一読すると,内容が驚くほど変わっていますが,所有している騒音計は,もう使えなくなったのでしょうか。

A:

規格の改廃により,騒音計(サウンドレベルメータ)を買い換えていただければメーカとしてはありがたいのですが,残念ながら,最近の製品をお使いであれば,その必要は低いと考えています。
  確かに,規格の規定内容は大きく変わりました。旧規格は,性能や試験方法について最低限のことだけを簡潔に記述する様式で規定していたので,運用にあたっては,いわゆる "解釈" が必要でした。そのため,場合によっては,解釈の違いにより,仕様の表記や規格への適合性の判断が立場によって異なることが生じました。1990年代まで,音響計測器に限らず,ほとんどのJISが同様の様式で制定されてきました。
  ところが,WTO/TBT 協定(世界貿易機関/貿易の技術的障害に関する規定)により,JIS の様式も一変しました。この協定では,対応国際規格が存在する場合には,余程の理由がない限り,様式も含めて国内規格を国際規格に整合させることを求めています。そこで,1995年から,JIS の国際整合化が進められました。本来であれば,騒音計の規格も当時の対応国際規格である IEC 60651 と IEC 60804 に整合させる必要が合ったのですが,これらの国際規格が改正作業中であったため,改正後の IEC 61672 シリーズが発行されるのを待って,漸く2005年に JIS 改正に至りました。
  国際規格(IEC)は,英語と仏語の二カ国語で書かれています。当然,英語又は仏語を母語としない国でも使われますので,国によって解釈の違いが生じないように曖昧さを排除することを重視しています。そのため,規定内容は,ある意味で非常に冗長なものになっています。一見,JIS の規定内容が激変したように感じられるのは,ここに要因があります。
  国際規格制定(改正)の目的の一つに時代の技術水準を反映させることがありますが,市場に流通している製品を排除すことがないような水準に留めることを重要な原則としています。
  JIS C 1509 シリーズは2005年に制定されましたが,2000年以降の製品であれば,概ね,新規格に適合しています(詳細は,各メーカにお問い合わせください)。1990年代の製品も EMC(電磁両立性)に関係する部分を除けば電気音響性能は新規格に適合していますが,厳密には新規格に適合していません。
  さて,規格への適合性は,どのように証明するのでしょう。試験方法補を規定する規格(JIS C 1509-2, IEC 61672-3)は発行されていますが,型式評価試験の運用は,2007年にドイツで始まったばかりです。我が国においては,まだ,その体制をどのように作っていくか検討している段階で,メーカの自己宣言や点検調整に頼っているのが現状です。
  なお,騒音計は計量法に定める特定計量器であるため,検定が行われていますが,検定検査規則の規定と JIS の規定には大きな隔たりがありますので,検定で合格したとしても JIS への適合性が判定されたことにはなりませんので注意が必要です(検定検査規則と JIS を整合させる作業が行われていますが,実際に運用されるのは,まだ先になると思われます)。

瀧浪 弘章(リオン)