日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (172)

Q:

音響関連の文献には,sweep tone,chirp tone,swept sine,time-streched pulse などの言葉が使われていますが,これらがどのようなものでどのような用途に用いられるものなのか教えてください。

A:

筆者も明確な定義があるかどうかについては,知りませんが,一般的には,sweep tone,chirp tone,swept sine などは,周波数が時間と共に変化するサイン波を意味し,システムの振幅−周波数応答の測定などに用いられているようです。一方,time-streched pulse(以下 TSP)は,インパルス応答を測定するためにデザインされた信号です。 インパルス応答は,文字どおり,システムにインパルス(離散系の場合はユニットパルス)を入力したときの応答ですが,インパルス信号は,時間軸上の一点にエネルギーが集中しているため,ダイナミックレンジが有限である一般のシステムで測定を行うと,SN 比が悪くなってしまいます。そこで TSP では,インパルス信号の持つエネルギーを時間軸上に分散させることで,SN 比を確保しています。 広い意味では「インパルス信号のエネルギーを時間軸に分散させた信号」を TSP と呼んでもよいのかもしれませんが,インパルス応答を計るという目的に戻ると,時間軸上に分散させたエネルギーを,応答の測定後に再び元に戻す操作が必要になります。そこで,TSP では,エネルギーを分散させる一つのやり方として,「周波数の2乗に比例して位相が進む(遅れる)フィルタをかける」というルールに従い,エネルギーを分散させています。このフィルタは,逆フィルタを容易に設計できるため,TSP 応答を測定した後,この逆フィルタをかけることにより,所望のインパルス応答を得ることができます。 位相回転のフィルタをかけて生成した TSP 応答信号は,元のインパルス信号と同様に,平坦な周波数特性を持ちますが,短時間に区切ってその一部をみると,位相回転のため,その瞬時周波数も時間と共に変化します。従って,結果的に sweep tone と同様な特性を持つことになります。

浅野 太(産業技術総合研究所)