日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (176)

Q:

本誌64巻4号に,建設工事騒音予測モデルが解説されていますが,建設工事騒音のように衝撃音や変動騒音など,広い範囲で騒音のレベルが変化する様々な騒音を測定するときに注意すべきことは何ですか?

A:

衝撃音や変動騒音などを測定する場合には,サウンドレベルメータのレベルレンジの選択に注意が必要となります。例えば,20〜100 dB のレベルレンジに設定し,表示している騒音レベルが 90 dB 程度であっても過負荷警告を表示することがあります。この場合,表示している値がレベルレンジの範囲内であっても,得られた測定値は正しい値ではありません。
  衝撃音の場合,ピーク値と実効値の比(波高率)は大変大きくなります。通常,実効値に相当する時間重み特性 F (Fast) 又は S (Slow) で重み付けられた時間重み付きサウンドレベル,もしくは時間平均されたサウンドレベル (Leq) を評価値として用いることが多いのですが,サウンドレベルメータは発生した音圧波形そのものの絶対値の最大値であるピーク音圧をもとに過負荷警告表示の判定をしています。そのため,波高率が大きい音の場合,表示レベルは選択したレベルレンジの範囲内にあっても,ピーク音圧レベルが過負荷の閾値を超えていると過負荷の警告を表示します。
  特定計量器として定められている騒音計(サウンドレベルメータ)は,測定レベルレンジの上限レベルで波高率が 3.16 の音に対しても過負荷警告表示を発しないように,7 dB 以上の過負荷マージンを備えています。しかし,衝撃音においては,波高率が 10 を超える場合も珍しくなく,仮に波高率が 15 (レベル換算で 23.5 dB) あると,7 dB の過負荷マージンを備えるサウンドレベルメータの場合,20〜100 dB レンジにおいてピーク音圧レベル 110 dB が過負荷の閾値レベルとなりますので,87 dB 程度の表示レベルであってもピーク音圧レベルは 110.5 dB となり,過負荷警告を表示してしまいます。
  つまり,この場合はサウンドレベルメータの画面上の表示レベルだけでは,レベルレンジの選択が正しいかどうかを判断することは難しいので,衝撃音を測定する場合には,余裕をもったレベルレンジの選択が必要となります。
  また,変動騒音には,波高率が大きい場合と小さい場合がありますが,いずれの場合においても測定対象となる騒音の変動幅を十分に考慮したレベルレンジの選択が必要となります。
  衝撃音,変動騒音を測定する場合には,建設工事騒音に関わらず,過負荷警告を表示しないようレベルレンジの選択に気をつけていただく必要があります。

大屋 正晴(リオン)