日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (177)

Q:

エコデザインの一環として,屋上緑化や壁面緑化が注目されていますが,これらは地域の音環境の改善・保全に役立つのでしょうか。

A:

都市内では,エネルギー使用の増大,都市形態の変化などにより,ヒートアイランド現象が進行しています。この現象の緩和策として,ライフスタイルの改善などによる人工排熱の低減,道路の保水性舗装,地下水の利用,風の流れる道作りなどがありますが,特に,敷地の緑化や建物の屋上・壁面の緑化事業が期待されています。建物の屋上・壁面緑化については,ヒートアイランド現象の緩和だけではなく,景観性の向上,室内温度低下による冷房負荷低減,建物壁面からの輻射熱の軽減など多くの環境保全効果が見込まれています。平成19年6月に国土交通省が発表した「全国屋上・壁面緑化施工面積調査」では,アンケートに回答した171社が平成12年〜18年に施工した屋上緑化の総面積は 160 ha,壁面緑化は約 10.1 ha とあります。また,1年間当たりの施工面積は平成12年と比べ,平成18年は,屋上緑化は約2倍,壁面緑化は約15倍と飛躍的に増加しています。
  屋上・壁面緑化では,植物が正常に育成する土層にあたる植栽基盤は,保水性,排水性及び通気性機能の長期保持,建物過重負荷を軽減するための軽量化が要求されています。そのため,植栽基盤の材料としては,ミズゴケ,赤玉土などの空隙率の高く,固結しない素材が配合されています。これら素材については,ある程度の吸音性能を有していることが確認されています。
  壁面を緑化する手法としては,・下垂式,・登はん式,・基盤造成式があります。下垂式及び登はん式の代表例としては,建物の壁面をツタ類で覆うタイプですが,音環境の観点からは,コンクリート面をツタで覆ってもほとんど効果はありません。つまり,植物及び葉自身は,吸音性能を有していません。一方,高速道路では,走行の快適性や景観に配慮して吸音型の金属製遮音壁(統一板)の道路側にツタ等が被覆されているケースがありますが,吸音面をツタで被覆しても統一板の吸音性能は保持されることは確認されています。壁面が植栽基盤となる基盤造成式については,ピートモスを用いたパネル型,水苔を用いたマット型の2種類の植栽基盤について,斜入射吸音率を用いて吸音性能を評価し,騒音低減対策の一環として道路構造に設置が可能な吸音性能を有していることが確認されています。
  屋上緑化につきましては,植栽基盤に植物が育成しており,音環境の改善効果の一助になると考えます。しかし,壁面緑化につきましては,ほとんどのケースは登はん型であり,建物の外壁にツタ類をはわすタイプです。これですと,先ほども指摘しましたが,植物自身は,吸音性能を有していませんので,音環境の保全効果に有効であるとは言えません。壁面緑化の環境保全効果の項目に,地域の静粛化,音環境の改善,保全効果を追加するためには,建物の壁面に植栽基盤,あるいは植栽基盤が剛体で覆われていないプランタタイプを施工する必要があります。

木村 和則(小林理研)