日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (180)

Q:

スタジオなどの小空間における室内音響設計には,ITU-R や IEC などで推奨基準があるようですが,どう使い分ければよいのでしょうか。

A:

スタジオの設計における推奨基準には,代表的な二つの規格があり,スタジオで扱うメディアに応じて,それぞれが選ばれています。一つは,ITU-R (International Telecommunication Union. Radiocommunicaion Sector:国際通信連合−無線通信部門) による勧告です。この中に,Rec. BS. 775-1 (Multichannel Stereophonic Sound System with and without Accompanying Picture),Rec. BS. 1116-1 (Method for the Subjuctive Assessment of Small Impairments in Audio Systems Including Multichannel Sound Systems) という二つの推奨があります。前者は,スピーカ配置が,後者は,室容積と寸法比,残響時間,暗騒音,伝送周波数特性,再生レベル等が規定されています。日本では,ITU-R に準じて,中小規模のスタジオに対してより自由度がある「Japanese HDTV」という規格も定められています。このため,放送局や音楽制作スタジオでは ITU-R 勧告がスタンダードとなっています。また,ダイレクトサラウンド方針のサラウンド再生方式が選択される場合,ほとんどが ITU-R 勧告を基準とします。
  もう一つは,THX 社の認証基準です。ルーカスフィルムの1部門として映画の品質規格化が目的でスタートした THX 社では,THX Cinema (一般の映画館) 認証のほかに,プロスタジオ用の認証に,THX Mix Studio (映画館規模のダビングスタジオ),THX Screening Room (試写室),THX pm3:Professional Multi-Channel Mixing and Monitoring (小規模のサラウンドスタジオ) という三つの認証プログラムがあります。これらの認証は,スピーカ配置,室内音響特性,映写性能から,使用する機材に至るまで,THX 社のテストをクリアすることで取得できます。認証後も,年1回継続してチェックが行われます。THX では,複数のサランウドスピーカを使用するディフューズサラウンド方式がとられるため,映画制作スタジオではスタンダードとなっています。
  一方,試聴室では,IEC (International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議) で規定している,IEC 60268-13 (Sound system equipment - Part 13: Listening tests on loudspeakers),があります。こでは,スピーカの試聴評価試験のリファレンスとして,室内音響特性,スピーカ配置,再生レベル,またリファレンス音源や,聴感実験の評価方法等が規定されています。そのため,オーディオ・デバイスメーカの自社開発・評価を行うリスニングルームにおけるスタンダードとなっています。
  最後に,一般家庭での試聴室ですが,ディジタル放送や DVD 鑑賞等で,制作環境との互換性を考え,ITU-R 勧告の機器配置をよりどころにすることが多いようです。
  一方 THX では,THX Certified Home Theater Dealer/Installer という認証基準で,販売・施工業者向けに,一般のホームシアタで THX 認定機器の適切なインストールを行うためのトレーニングプログラムを行っています。

佐竹 康(日東紡音響エンジニアリング)