日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (182)

Q:

諸外国における道路交通騒音の予測方法等に関する最近の情報(動向)を教えて下さい。

A:

諸外国では様々な道路交通騒音の予測方法が用いられています。我が国では最近,ASJ RTN-Model が騒音の評価や監視の分野で広く利用され,その最新版 ASJ RTN-Model 2008 が本号において発表されました。
  道路交通騒音に代表される環境騒音の低減については近年,特に EU で盛んな取り組みがあり,その背景には以前の Q&A コーナー(60巻4号)で紹介された EU DIrective 2002/49/EC が深く関係しています。その Directive(指令)の下,HARMONOISE(2001年8月から約3年半)や IMAGINE(2003年12月から3年)というプロジェクトが実施され,特に前者において道路交通騒音の予測方法が研究されました。
  その予測方法は,大きく音源モデルと伝搬モデルに分かれる点で ASJ RTN-Model と類似しています。音源モデルを細かく見てみると,例えばパワーユニット系騒音とタイヤ/路面騒音の2種類の音源を路面上の異なる高さに配置して考慮する点や,車種分類が非常に細かい点など,概して交通条件や路面性状などの影響をきめ細かやかに扱うことが可能です。これは,EU 内の道路・交通環境が多種多様であることの裏返しかも知れません。一方伝搬モデルとして,Engineering モデルと Reference モデルの2種類が開発されました。前者は日常的に用いられるモデルと位置付けられ,複雑な幾何配置に適する一方で複雑な伝搬変数を取り扱えないモデルであり,Nord2000 プロジェクトで開発された手法に改良を加えた Point-to-Point モデルです。後者には BEM と PEM 等を組み合わせた手法が採用され,Engineering モデルで扱えない複雑な伝搬問題に対応可能なモデルであると同時に,Engineering モデルの校正という役割があります。なお,この伝搬モデルについては,伝搬距離 100 m までは 1 dB, 平坦地形で 2,000 m までは 2 dB,起伏のある地形で 2,000 m までは 5 dB の誤差とされ,予測結果に対する "不確かさ" まで示されています。
  上記指令によれば,該当地域における戦略的騒音マップ第1版の作成とそれを踏まえた行動計画の策定が昨年7月18日に終わり,現在は行動計画を実行に移す段階と思われます。環境騒音の低減に向けて騒音マップがどのように利活用され,どのような行動計画が策定,実施されるのか等,興味は尽きませんが,このプロセスで具体的にどれだけ環境騒音の状況が改善されたかがもっとも知りたいところです。その上で,我が国の環境騒音の低減に役立つもの(考え方や仕組み等)はないか,引き続き動向をウォッチしていく必要があると思います。
  最後に,HARMONOIZE や IMAGINE の概要やその成果等が次の URL で紹介されていますので,参考にして下さい。http://www.imagine-project.org/

  [注記]
  ・RTN (Road Traffic Noise):道路交通騒音
  ・Point-to-Point:特定の音源−受音点間の伝搬
  ・BEM (Boundary Element Method):境界要素法
  ・PEM (Parabolic Equation Method):PE法

今泉 博之(産業技術総合研究所)