日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (184)

Q:

最近,3階建工業化住宅が増えていると思います。道路,鉄道などから発生する振動は,家屋内では地盤上に比べて増幅されることがあると聞きますが,この現象はどのようなものでしょうか。

A:

一般に,道路や鉄道などから発生する振動は,地盤を伝搬して家屋などの構造物の基礎に入力されます。更に,家屋内を伝わる過程で様々な部位の影響を受けるため,地表面での振動と比べて,家屋内の振動は周波数により増幅,あるいは減衰します。木造家屋の板の間と地表面との振動の関係については,環境庁(当時)が調査した結果があります。家屋内の振動レベルは中央値で +5 dB との結果が示されていますが,この資料は30年以上も前のものです。そこで,近年の3階建工業化住宅における測定事例 [1] を紹介します。
  道路交通振動を対象とし,地表面及び家屋内(2階,3階)の3点で,水平2方向と鉛直方向の計3方向について,中心周波数 1〜80 Hz の 1/3 オクターブバンドごとの振動加速度レベルを測定しました。鉛直方向については,地表面でピークを示した 20 Hz の振動が家屋内でも卓越しました。このバンドの振動加速度レベルの増幅量は,2階,3階ともに約 4 dB でした。一方,水平方向については,地表面でピークを示さなかった 3.15 Hz の振動が家屋内で卓越しました。 このバンドの増幅量は2階で約 20 dB,3階で約 30 dBで,家屋内では水平方向の振動レベルが鉛直方向よりも大きくなっていました。鉛直方向に比べて水平方向の増幅量が顕著に大きい傾向は,在来線鉄道の測定でも見られました。水平方向の振動増幅は,3階建工業化住宅の1次固有振動数が 3〜5 Hzであることに起因していると考えられます。これらの測定事例は3階建工業化住宅でのものですが,2階建木造住宅の2階床でも 4〜8 Hz の水平振動が卓越して増幅する事例の報告があります。
  水平振動は振動規制法の対象外となっていますが,紹介した事例のように,地表面ではピークを示さない低周波数域で,家屋による振動増幅が顕著に大きくなることがあります。振動問題を解決するためには,居住者の生活環境を脅かしている振動を正確に評価することが第一歩となります。そのためには,暴露されている振動を評価するための測定手法を確立することに加え,家屋内の振動を簡便かつ精度良く予測する手法の構築が必要不可欠になると思います。

文献
[1] 日本建築学会,建築物の振動に関する居住性能評価指針・同解説 (日本建築学会,東京,2004).

横島 潤紀(神奈川県湘南地域県政総合センター)