日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (185)

Q:

何故気流から音が発生するのでしょうか。

A:

物をたたけば音が出ることはよくご存じですね。これは,固体が振動することによって発生する固体振動音ですが,音は流れの変動からも発生します。気流から発生する音は「空力騒音」と呼ばれ,その代表は,風が強いときに電線がヒューと鳴る現象です。これは紀元前から知られていて,エオルス音(エオルスはギリシャ神話の風の神)と呼ばれています。エオルス音の音源は,基本的には「流れの中の渦の変動」ですが,これを定式化するのに二つの考え方があります,「渦音理論」と「固体表面圧力変動理論」です。
  円柱や電線のように 2 次元柱状物体に直角に流れが当たると,カルマン渦と呼ばれる渦が両側から交互に周期的に放出され,この渦の変動が音源となるという考えが渦音理論です。渦が流れの中でこすれあって圧力変動をもたらし,音になると考えればよいかも知れません。物理的には正しいのですが,渦の挙動をくまなく実験的に把握するのは困難なのであまり実用化されていませんでした。しかし最近数値流体力学の発展で有用性が見直されています。
  一方,この渦の放出に伴って発生する,物体上の圧力変動が音源であるとする考え方もあります。これは見かけ上の音源と言われていますが,固体面に働く流体力の時間変化率から音の発生を定量的に求めることができるので,流体機械から発生する騒音の予測に使われます。飛行機が出発するときに,後方に「出発渦」を残し,その反動で翼回りに循環(渦)が発生して揚力を得ます。カルマン渦は,方向が交互に変動する出発渦と見なすことかでき,発生するたびに円柱周りの流体力としての揚力が変動して,その時間変化により音が発生すると考えます。
  第 2 次対戦後,ジェットエンジンの騒音が大きな問題となりました。これをはじめて研究したのが英国の Lighthill で,1952 年に空力騒音に関する最初の論文を発表しています。それによるとジェット騒音の音源は流れの乱れであり,その強さは流速の 8 乗に比例するので,エンジンの直径を大きくして,ジェット流速を下げれば,騒音は画期的に下がることを示しました。それに従って開発されたのがターボファンエンジンで,騒音エネルギーは 1,000 分の 1 程度に減少しているようです。空力騒音の詳しい解説は吉川 茂・和田 仁 編著「音源の流体音響学」(日本音響学会編,コロナ社)を参考にして下さい。

藤田 肇(日大)