日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (189)

Q:

低周波音の原因を調べる方法について教えて下さい。

A:

低周波音の定義は明確ではありませんが,環境省や騒音制御工学会では,およそ 100 Hz 以下の音を低周波音,通常の人では聞こえない 20 Hz 以下の音を超低周波音と分類されているようです。低周波音の特徴は,ある特定の周波数やその倍音が顕著に卓越した音である場合が多いことです。例えば,工場に設置されたコンプレッサからの低周波音は回転数や往復周期に起因した音,織機工場からの低周波音は多数の織機が同じ回転数・動作で発生する音,変圧器からの低周波音は供給電源の 50 Hz(糸静線以西は 60 Hz)の倍音周波数の電磁振動に起因した音,ポンプ及び接続管路系からの音はポンプの回転数に羽枚数を乗じた周波数の水中内脈動に起因した音などが特徴的な事例です。 また,機器など自体から発生する低周波音だけでなく,機器などの振動が地盤や建物躯体内を伝わり住宅居室などの内装に到達して放射される低周波数の固体伝搬音も影響する場合が多いのも特徴と言えます。
  低周波音の原因を調べる方法としては,例えばある住宅で問題となっている低周波音と発生源と想定される機器などの発生音との相関性がどの程度あるのかを把握することが基本となります。この場合には,低周波音がある特定の周波数が顕著に卓越しているという特徴に着目します。対象低周波音と機器などの発生音の周波数特性を測定し,低周波音の影響として想定される周波数においてともに顕著に卓越している場合,その機器などを発生源として抽出します。多くの場合,低周波音を発生している機器などは,機器など自体の振動も同様の周波数で顕著に卓越する場合が多いので,発生源の振動の周波数特性を測定して特定の確度を上げることも有効になります。 しかし,以上の方法でも,他の騒音の影響で卓越周波数が明確に検出できない場合もあります。最も確実な方法としては,対象低周波音と機器などの発生音とのコヒーレンス関数を測定する方法が提案できます。コヒーレンス関数とは,二つの信号間の相関度合いを表す値であり,例えば対象低周波音の信号と機器などの発生音の信号とのコヒーレンス関数の値が 1 である場合,両者の相関は 100 % である(両者が完全に関係している)ことを示します。この方法では,対象とする音が他の騒音に埋もれて卓越していない場合にも相関性を把握することができるので,発生源を特定する確度が上がりますし,固体伝搬音の影響なとも把握できる場合もあります。現在では,FFT 分析器やパソコンの FFT 分析ソフトも普及しているので,この測定も実施可能と考えます。

平松 友孝(音・環境研究所)