日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (019)

Q:

アクティブノイズコントロールで騒音を消そうとしても,付加音源からのエネルギーの分だけ,結局騒音の総量は増すのではありませんか?

A:

この問題に関しては,以前から様々な解釈が行われ,議論されていることと思います。確かに新たに音源を設置して音を放射するわけですから,音場で観測されるエネルギーの総量としては増えているように思えます。しかし,文献に見られる,「2次音源によるアクティブ吸音」という解釈等からも明らかなように,アクティブコントロールという方法は一概に音場で(音として存在する)エネルギーが増加するはずだ,という考え方のみでは説明できないようです。例えば「アクティブ吸音」に際しては音エネルギーは2次音源スピーカ内部,あるいはその駆動系内部で熱エネルギーに変換されていると考える訳です。文献中ではアクティブコントロールを“エネルギーの流れ”に注目して分類することが試みられており,「音響インピーダンス0面(不連続面)でのエネルギーの反射」によってエネルギーの流れが変化することで制御の効果が得られる,等の興味深い解釈も行われています。このような解釈を用いて考えると,アクティブコントロールとはエネルギーの形態,あるいは分布の様子を変化させる方法であり,騒音源や2次音源系,また周りの音場すべてを含めたトータルのシステムにおいてエネルギーは保存されていると考えることができるかと思います。私共も,障壁による回折場に対して仮想的な音源として働く障壁のエッジでの音圧を2次音源によって能動的に下げることで広い領域での減衰を得ることを試みています。この場合には障壁によって音源が見えない領域(影の領域)では大きな減衰を得ることができるのですが,特に障壁の音源側で制御によって音圧が上昇する領域も存在します。エッジの音圧をキャンセルすることである種の不連続点(面?)を生成し,これが流れの方向を変化させて影の領域へ流れ込むエネルギーを減少させていると考えることもできます。障壁を越えて流れ込んでくる音の指向性を変化させると言ってもいいかもしれません。音響インテンシティやインピーダンスを用いた,より定量的,あるいはより可視的な説明ができないものかと考えております。

尾本 章(九州芸工大)