日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (192)

Q:

風力発電施設から発生する音が問題になっていますが,諸外国における関連情報を教えて下さい。

A:

風力発電施設から発生する音は,主に翼の回転,ナセル内の歯車や発電機の回転に起因します。近年,風車の形式や翼形状の最適化等によって低騒音化が進んでいますが,時々刻々変化する気象影響等によって現象は必ずしも簡単ではありません。環境省では,諸外国における風力発電施設から発生する騒音・低周波音に係る基準等の状況について調査を行い,結果を Web 上に公開しています。
  それによれば,風力発電施設から発生する音について,低周波数音に特化した基準等は見当たらず,騒音として評価されています。我が国の環境基準にように基準値を定めている場合と暗騒音レベルに一定のレベル値を加えた値を基準値として定めている場合等に大別され,この調査では後者の事例が多いようです。例えば,デンマークには風力発電施設から発生する音に着目した特別な法制度があり,対象とする地域区分に対して風速ごとに限度値が設定されています。オランダやカナダ等も類似した基準の設定方法が採られています。イギリスでは LA90,10min が用いられ,昼間と夜間に対して風力発電施設から発生する音が暗騒音を 5 dB 以上超過してはいけないとする一方で,フランスでは風力発電施設から発生する音による上昇分を昼間は 5 dB,夜間は 3 dB とし,重み付けを変えています。
  セットパック(風力発電施設から住居等までの距離)については,デンマークで少なくとも風力発電施設の全高の 4 倍と定められている一方,米国では地方自治体等における条例レベルでセットバックの設定が多く導入されています。フランスでもセットバックに係る調査研究が実施されましたが,結論を得るまでには至ってないようです。
  2009年8月に開催された inter-noise 2009 でも風力発電施設から発生する音に係る研究発表が 20 件弱ありました。今回は Plenary Lecture として風力発電施設から発生する音に係る研究が取り上げられ,世界的な関心事であることをうかがわせました。また,2005年からは INCE/Europe が中心となって風力発電施設から発生する音に係る諸問題を議論する国際会議も開催されています。これまで順調に導入設備容量を伸ばしてきた欧米諸国でも風力発電施設の設置場所の適地が減ってきたと言われ,それに係る苦情も増加傾向にあると言います。音の問題はとかくローカルな課題と捉えがちですが,風力発電に関しては,地球環境問題とも密接に関連するため世界全体でどう考えるかが非常に大切であろうし,音響分野からの積極的なアプローチ及びそれによる課題の解決が一つのキーになることは間違いないであろうと考えます。

今泉 博之(産総研)