日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (193)

Q:

スピーカの位相特性が悪いと,どういう問題が起きますか?

A:

スピーカ,例えばダイナミックスピーカでは,磁場内のボイスコイルに電流を流すことによって発生する力で振動板を動かして音を出しています。ところが,特に,高域の周波数では,ボイスコイルと振動板の間で動きがずれてきます。また,振動板が分割振動を起こし,それぞれの場所で位相の異なる音が出て,それらが合成された音は位相がずれます。これらの原因により,位相に周波数特性が生じます。つまり位相特性です。
  すべての周波数において位相がずれないことか理想ですが,ずれるとどういった問題が生じるのでしょうか。幾つかのケースが考えられます。
  まず,単一のスピーカで考えてみますと,信号の波形が変わるという問題があります。音楽信号などのように様々な周波数を含んだ信号をスピーカに入力した場合,位相に周波数特性があると,入力波形と異なる波形の音波がスピーカから放射されます。このため音色に変化が生じる可能性があります。ただ,人間の耳は音を分析的に感受するため,位相差は検知されないという意見もあり,これに関しては議論がありまだ決着していません。
  次に,2 way,3 way といった,マルチウェイスピーカにおける問題です。この場合,特にクロスオーバ帯域付近では,形状,寸法,位置等が異なる複数のスピーカユニットから,同じ周波数の音が放射されるため,位相の異なる音が混ざり合い,波形を乱すという問題が生じます。これを解決しようと,ユニット取り付け位置を前後にずらしてボイスコイル位置を一致させ,位相のずれを防ごうとしたキャビネットの設計もあります。ただ,ボイスコイル位置は一致させられても,振動板の形状や寸法が異なる以上,音の発生位置そのものは不一致のままという問題はあります。
  最後に,ステレオ等,複数のチャンネルにおける位相のずれによる問題です。この場合,周波数によっては,位相の進んでいるスピーカの方に定位(音像の位置)が移動します。例えば,ステレオの場合,右スピーカの位相が進んでいると,本来中央に定位すべき音像が右に定位します。また,位相差が大きいと,両スピーカの外側に定位することもあります。これは,サラウンド効果を求める多チャンネルシステムでは特に問題です。
  いずれにせよ,スピーカの性能には音圧特性,再生周波数帯域,指向性等が複雑に関連しており,位相特性だけでは判断できないと考えられています。

森田 雄一(フォスター電機)