日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (198)

Q:

視覚に障害があるパソコンユーザが無料で使えるスクリーンリーダ(画面読み上げソフト)はありますか?

A:

視覚に障害がありパソコンの画面を見ることができない方は,マウスを使わずキーボードだけでパソコンを操作し,音声出力や点字ディスプレイで文字情報を読み取っています。OS の機能を拡張してこのような使い方を可能とするのがスクリーンリーダと呼ばれるソフトウェアです。日本語の Microsoft Windows 環境に対応した製品としては 95Reader,JAWS,PC-Talker,FocusTalk,xpNavo などが知られており,複数のソフトウェアを目的に応じて使い分けている方もいます。更に Web サイトを読み上げるための専用ソフトウェア (ホームページ・リーダなど) も併用されます。
  この分野でいま注目されているのは NVDA (NonVisual Desktop Access) というオープンソースソフトウェアです。オーストラリアの Michael Curran 氏をはじめとした多くの人たちによって,2006 年より開発され,20 か国語以上の言語に翻訳されています。
  NVDA は無償で配付されているので,障害がある方に加えて,例えば Web サイトの制作者に「アクセシビリティに配慮するための確認用」として利用されつつあります。
  もう一つ NVDA が注目されている理由は高機能であることです。例えば最近の Web サイトでは,ページを遷移しないで内容をどんどん書き換える AJAX (Asynchronous JavaScript + XML) という技術が多用されています。これまでは「動的に書き換わるサイトはスクリーンリーダで操作できない」のが常識でした。しかし WAI-ARIA という規格が提案され,この問題が解決されつつあります。このような最新技術に NVDA は積極的に対応しているのです。日本の Web アクセシビリティ規格の最新版 JIS X 8341-3:2010 への対応のためにも NVDA の活用が期待されています。
  NVDA 日本語化プロジェクト (NVDAjp) は,ユーザインタフェースやヘルプの日本語化,日本語キーボードへの対応などを行ったソフトウェアを公開しています。初めて触ってみる方にお勧めするのは USB メモリなどで持ち歩いて気軽に使える「ポータブル版」です。アクセシビリティ評価の目的であれば日本語音声合成エンジンがなくても利用でき,また日本語音声合成エンジンを別途購入・入手すれば音声読み上げが使えます。
  主要部分が Python というスクリプト言語で実装されている NVDA は,この分野のソフトとしては開発者にとっての敷居が低くなっています。
  NVDAjp では「かな漢字変換操作の読み上げ」について急ピッチで作業を進めており,また無償配付できる音声合成エンジンの組み込みにも取り組んでいます。あなたも「音声で操作するパソコン」を体験してみませんか?そして腕に覚えのある方は NVDA の開発に参加してみませんか?

西本 卓也(東大)