日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (200)

Q:

吸音率の測定に関して面積効果という言葉をよく耳にしますが,これはどのような効果なのでしょうか。

A:

建築の内装等に用いられる平面吸音材料の乱入射吸音率の測定では,ほぼ拡散音場が成立していると考えられる残響室内の床に目的の試料を設置し,試料の設置前後における残響時間の測定値の差から乱入射吸音率を求める方法が JIS A 1409 に定められています。多くのデータブックに掲載されている吸音率はほとんどすべてがこの方法(残響室法)によって測定されたものです。
  しかしながら,これらの測定値はしばしば 1 を超えることがあることや,表面インピーダンスが既知である無限大試料に対して理論的に求めた乱入射吸音率である統計吸音率の値との間にかなりの乖離が見られ,同じ材料でも試料面積が小さいほど測定された吸音率が大きくなります。この現象は面積効果と呼ばれています。また,吸音率が大きくなるほどこの効果が顕著になることも知られています。
  このような現象が生じる原因については,有限の面積の試料を残響室の床に設置した場合,試料縁辺付近で試料面上の音圧と試料に覆われていない床面上の音圧に大きな差が生じるため,音圧の高い試料近傍床面付近から音圧の低い試料面へ音圧勾配による音響エネルギーの流れ込みが生じるのが原因です。これは波動解析による結果からも明確に分かります(図-1参照)。すなわち,吸音面への総流入エネルギーを,幾何学的に入射した音のエネルギーで基準化したときに,周辺からのエネルギーの流れ込みが付加された分だけ吸音率を上昇させ,試料面積が小さいほどこの影響は相対的に大きくなることが理解できます。試料面積が 10 m2 を超える JIS による測定でもかなりの面積効果を含む場合があることが理論的にも示されます。
  本来は面積効果を含まない乱入射吸音率がデータブックに載せられるのが理想かも知れませんが,このような測定ができたとしても,実際に吸音材等を使用する場合には,周囲に用いられる他の吸音材料や壁材料の間で相互に影響を及ぼしあって面積効果が生じます。このような効果は波動論的に予測する必要があり,面積効果を含む正確な吸音力の予測は通常かなり困難であるのが現状でしょう。


図-1 平面波が垂直入射する場合の吸音面近傍における音響エネルギーの時間平均流の計算例

河井 康人 (関西大)