日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (035)

Q:

アクティブノイズコントロールで消音する場合,音響エネルギーはどこへ行ったのですか?

A:

以前にも同様の質問がありましたが,アクティブノイズコントロールで消音する場合,音源とスピーカ,誤差マイクロホンの配置などで種々のケースが考えられます。まず制御スピーカが,消音しようとする音波の波長に比べて十分音源の近くにある場合は,遠方への放射音響パワー自体を低減することが可能です。この場合,音源側から見れば放射音響インピーダンスが変化し,遠方から見れば音響変換効率が低減したことになります。空気粒子は動くが音圧が立たず,放射される音響エネルギー自体が小さくなります。空気粒子の振動エネルギーは制御スピーカに流れ,スピーカで吸収されています。つまりスピーカの振動による熱エネルギーとして消散します。閉空間のこもり音制御の場合も類似の関係になります。制御スピーカを作動させることにより,反共鳴を実現し,音源の放射インピーダンスを低減して音源がいくら振動しても音にならないようにします。この場合も粒子振動エネルギーはスピーカの振動によって消散すると考えて良いでしょう。ダクトの消音の場合は,制御スピーカは伝搬してくる音波と逆位相の音波を放射することによって下流側を消音します。 この場合音波は上流側に完全に反射されており,音源と制御スピーカの間で音場が形成されます。音源から,放射される音響エネルギーはその音場によって変化しますが,放射された音響エネルギーは制御スピーカで吸収されると考えられます。音源から離れた局所空間を消音する場合は,音源も制御スピーカも放射音響インピーダンスはお互いの存在にあまり影響されず,それぞれが音響エネルギーを放射します。両者から放射された音波がキャンセルする局所的な空間だけが消音し,他は増音することになります。音響エネルギーとしては,それぞれから独立に放射される場合とほぼ変化なく,両者のベクトル和となると考えられます。更に,制御スピーカを無反射条件を満足するように制御することも可能であり,その場合は,音響エネルギーはスピーカに吸収されることになります。このように,制御の仕方によって音響エネルギーは種々の形態をとります。

西村 正治(三菱重工)