日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (038)

Q:

ラウドスピーカのインピーダンスは 8 Ω が多いようですが,その技術的必然性?あるいは歴史的背景はどのようになっているのでしょうか?また,この値はどのような条件におけるものとして定義されているのでしょうか?

A:

1950年代の日本のハイファイオーディオ界は,米国の影響を強く受けており,その当時の真空管式パワーアンプには一次側インピーダンス数 kΩ,二次側インピーダンス 16 Ω の出力トランスが付いていました。スピーカのインピーダンスもこのトランスに合わせて,16 Ω のものが一般的でした。16 Ω が使われた理由は,その辺がスピーカの設計上都合が良かったことと,出力 1 W のときの端子電圧が 4 V ときりが良いこともありました。その後,1960年代に入って低出力インピーダンスのトランジスタ・パワーアンプが開発され,直接スピーカが接続されるようになりました。トランジスタ・パワーアンプは定電圧源として動作することから,スピーカのインピーダンスが低い方が,パワーを余計引出せるために,高い音圧レベルが得られます。そのために 16 Ω のスピーカより見掛けの感度が良くなる 8 Ω のスピーカが有利となり,多く発売されるようになりました。 最近のスピーカシステムでは,感度競争が更に激しくなり,6.3 Ω や 4 Ω のスピーカも見受けられます。スピーカに表示するインピーダンスの定義としては,初期の JIS (1960年代) では公称インピーダンスとして,400 Hz における値と定めていました。その後,IEC 規格の Publication 200 (1970年代) が制定され,その定義をとり入れて,低音共振周波数以上の周波数範囲で示す最初の最低値をスピーカのインピーダンスとしています(JIS C 5530)。しかし,更にその後 IEC 規格も改正され,現在では,定格インピーダンスとして,メーカーが指定する値とすることになっています。JIS C 5530 では,標準数 R 10 (3.2,4.0,6.3,8.0,,,) から選ぶことを推奨しています。ただし,スピーカのインピーダンスの最低値が,指定値の 80 % を下回らないことが条件となっています。これは,必要以上の過負荷をトランジスタ・パワーアンプに掛けないためです。

山本 武夫(パイオニア)