日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (052)

Q:

最近のパーソナルコンピュータには,音声信号入出力用のサウンド機能が用意されていますが,これを音響関係の実験や測定に使用することは可能でしょうか?また,その場合の注意点など教えて下さい。

A:

最近のパーソナルコンピューターには,ステレオで48kHz,16bitのサンプリングが可能なサウンド機能が装備されています。また,サンプリング周波数もかなり広範に設定可能なものがあります。サウンド機能は,多くの場合独立したサウンドカードとして別売されており,従来の機種にも数万円で追加可能なものがほとんどです。 まず,AD/DA変換する際に重要なアンチェイリアシングフィルタは,ほとんどのサウンドカードには装備されており,サンプリング周波数を変化させると,自動的に遮断周波数も調整されるものが多いようです。しかし,比較的広く使用されているサウンドカードについて実際に測定して見ると,フィルタの遮断周波数の設定が高いため,一部の帯域で折り返し歪が生じてしまう場合があるようです。 例えば,サンプリング周波数10kHzでAD変換した場合,測定したカードの場合,遮断周波数がおよそ 4.7kHzのため,5.2kHzで約ー15dB,5.8kHzでー40dB,の損失となっています。もし,SNRを40dB以上とするならば,ナイキスト周波数を越える800Hz分が折り返す可能性があるため,4.2kHzまでの帯域にAD変換後帯域制限する必要があります。また,AD変換器の線形性及び変換雑音についても測定してみると,公称16bitのAD変換を行っているものでも,例えば最大振幅で200Hz以下の低周波信号を印加した場合,2次高調波の相対レベルはー50dB〜ー60dBであり,実質8〜10bit程度の精度しか得られていません。また,コンピュータ内部雑音と思われる数Hz程度の7〜8bit相当の振幅を持つ低域ノイズがあり,これをAD変換後ディジタルフィルタで処理しても,実質的な有効ビット長は12bit程度と考えた方が良さそうです。 結論としては,音響関連の実験や簡単なデモンストレーション等には,この種のサウンドカードは大変重宝で,その特性を把握した上で用途を限って使用すれば,十分な利用可能な性能を持っていると考えていいと思います。

執筆者:宇佐川毅(熊本大学)