日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (053)

Q:

計量法の改正で,従来「騒音レベル」と呼ばれていた「A特性音圧レベル」が,単に「音圧レベル」ということになったそうですが,A特性のかかっていない「音圧レベル」とどう区別するのですか?

A:

とりあえずは,「音圧レベル」と区別するために「騒音レベル」という言葉をそのまま使って下さい,というのが答えです。 平成5年11月に新計量法が施行されました。 この改正の趣旨,内容についてはJQAの杉山氏が本誌第51巻6号(1995)p.485に述べられているとおりです。さて,新計量法の中で音響・振動に関係するものとして,計量するべき物象の状態の量としての音響パワー,音圧レベル,振動加速度レベルが,また適正な計量の実施を確保するためその構造又は器差に係る基準を定める必要のある計量器:特定計量器として騒音計と振動レベル計が規定されています。 さて,「騒音レベル」はJIS Z8106の音響用語(一般)にあるとおりA特性音圧レベルともいわれ,これもJIS C 1502 やJIS C 1505に規定されるA特性で重み付けられた音圧から算出されるので,重み付けのされていない「音圧レベル」とは異なります。 旧計量法(昭和47年改正)では「騒音レベル」を物象の状態の量としていました。これを新計量法において「音圧レベル」に変更した意図は,「音圧レベル」がより基本的な量であり,それに重み付けという操作を加えたものが「騒音レベル」であるから,計量法に記載すべき基本量として「音圧レベル」がふさわしいとの判断からでした。 計量法のいう「音圧レベル」については,計量単位令(政令)に音圧レベルの定義として「音圧実効値(パスカルで表わした大気中における圧力の瞬時値と静圧との差の二乗の一周期平均の平方根をいう。以下同じ。)の十万分の二に対する比の常用対数の二十倍又は音圧実効値に通商産業省令で定める聴感補正を行って得られた値の十万分の二に対する比の常用対数の二十倍」と書かれています。ここで「騒音レベル」に相当する量が現れます。しかし,これは「音圧レベル」の定義ですので,質問者の言われる疑問が生じるわけです。更に見ていきますと,特定計量器検定検査規則(通商産業省令)に,「騒音計には,その見やすい箇所に,次に掲げる事項が表記されていなければならない。二騒音レベル(計量単位令別表第二号第六号の聴感補正に係る音圧レベルを言う。以下同じ)の計量範囲」と書かれており,ここで初めて「騒音レベル」という言葉が現れます。 さて,「騒音レベル」を何故,前面に出せなかったかということについてですが,これは,全く法律の性格上の理由です。計量法本体に書かれた量のみを規制の対象にするという考えから,「騒音レベル」の定義はできても「騒音レベル」の言葉を掲げることができなかったわけです。このように,計量法本体には「騒音レベル」は出てきませんが,省令の段階で,聴感補正に係る音圧レベルの別の表現として「騒音レベル」が入っていますので,騒音計で計る量として「騒音レベル」は使えるものと考えられます。 この事情は「振動加速度レベル」と感覚補正に係る振動加速度レベルである「振動レベル」の関係も事情は全く同じです。 さて,話は別ですが,世界的な視野で見た場合にsound levelを「騒音レベル」としてよいか,sound level meterを「騒音計」と言ってよいかという議論もあることを,最後に付け加えさせていただきます。

執筆者:佐藤宗純(電総研)