日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (060)

Q:

ラウドスピーカのインピーダンスは8Ωが多いようですが,その技術的必然性?あるいは歴史的背景はどのようになっているのでしょうか?また,この値はど のような条件におけるものとして定義されているのでしょうか?

A:

1950年代の日本のハイファイオーディオ界は,米国の影響を強く受けており,その当時の真空管式パワーアンプには一次側インピーダンス数kΩ,二次側インピーダンス16Ωの出力トランスが付いていました。スピーカのインピーダンスもこのトランスに合わせて,16Ωのものが一般的でした。16Ωが使われた理由は,その辺がスピーカの設計上都合が良かったことと,出力1Wのときの端子電圧が4Vときりが良いこともありました。その後,1960年代に入って低出力インピーダンスのトランジスタ・パワーアンプが開発され,直接スピーカが接続されるようになりました。トランジスタ・パワーアンプは定電圧源として動作することから,スピーカのインピーダンスが低い方が,パワーを余計引出せるために,高い音圧レベルが得られます。そのために16Ωのスピーカより見掛けの感度が良くなる8Ωのスピーカが有利となり,多く発売されるようになりました。最近のスピーカシステムでは,感度競争が更に激しくなり,6.3Ωや4Ωのスピーカも見受けられます。スピーカに表示するインピーダンスの定義としては,初期のJIS(1960年代)では公称インピーダンスとして,400Hzにおける値と定めていました。その後,IEC規格のPublication 200(1970年代)が制定され,その定義をとり入れて,低音共振周波数以上の周波数範囲で示す最初の最低値をスピーカのインピーダンスとしています(JIS C 5530)。しかし,更にその後IEC規格も改正され,現在では,定格インピーダンスとして,メーカーが指定する値とすることになっています。JIS C 5530では,標準数R 10(3.2,4.0,6.3,8.0...)から選ぶことを推奨しています。ただし,スピーカのインピーダンスの最低値が,指定値の80%を下回らないことが条件となっています。これは,必要以上の過負荷をトランジスタ・パワーアンプに掛けないためです。

執筆者:山本武夫(パイオニア)