日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (064)

Q:

音環境の保全において,海外では¨Natural Quiet¨を重要視しているという話を聞いたことがあります。これは,具体的にどんな概念なのでしょうか。また,どのように保全の施策は進められようとしているのでしょうか。

A:

“Natural Quiet”は、日本語に訳すとすれば“自然の静けさ”といったところでしょうか。簡単に言ってしまえば「自然の静けさを大切に保全しましょう」という考え方です。ここでの“静けさ”は、無音ということではありません。豊かな自然の音、例えば鳥の声や様々な水の音等、自然の中に佇んだときに聞こえてくるはずの音が、何等かの騒音に消されたり邪魔されたりすることなく存在している“静けさ”です。特に欧米では余暇を自然の中で過ごす場合、いかに自然そのものを享受することができるか、ということが重要とされているため、“Natural Quiet”を満喫するために山へ出かけたのに、上空を飛ぶヘリコプタや湖を走るジェットボートの音がうるさくて、十分にリフレッシュできなかったとすると、これはひとつの損害を受けたと感じるようで、多くの日本人の考え方とはだいぶ異なります。1998年11月にニュージーランドはクイーンズタウンという小さな水辺の町で、初めての“レクリエーション騒音に関する国際シンポジウム”が開催されました。ナショナル・パークの自然の音が遊覧飛行をする小型飛行機の音にかき消されてしまう問題や、テーマパークやサーキットからの騒音が周辺環境へ与える問題等、様々な話題や調査結果が報告されました。“Natural Quiet”はここでも重要なキーワードとして採り上げられ、盛んに議論されていました。このように徐々に話題になりつつある“Natural Quiet”ですが、海外でも新しい概念であり、まだ具体的な施策までは話は及んでいないようです。この概念をより広く世界に広め、音の視点から自然環境の保全を考えようとしているのが現状といえるでしょう。

中村ひさお(千代田化工建設)