日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (067)

Q:

飛行機に乗っているときは,飛行機の音は「ゴー」というふうに聞こえますが,地上で聞くと「キーン」というように聞こえるのは何故でしょうか?

A:

ジェット機の騒音源は、幾つかに分けられます。最大の音源はジェットエンジンですが、これも空気の出口から聞こえる排気ジェット音と、入り口から聞こえる軸流圧縮機の音に分けられます。また、飛行中は胴体の回りの境界層が乱れて、その中の圧力変動が胴体を加振して、音となって機内に放射されます。これらは、皆空気の流れから発生するので、流体(空力)騒音と呼ばれています。ジェットエンジンの排気音と圧縮機音を比べると、前者は速度の8乗、後者は速度の6乗に比例するので、高速飛行時は排気音が、低速時は圧縮機音が卓越します。飛行中、機内で聞こえる音は、エンジンの排気音と、胴体回りの乱流境界層からの音で、エンジンの後ろ側の席では前者が、機首に近い席では後者がよく聞こえます。どちらも乱流から発生する音なので、「ゴー」と聞こえます。旅客機用のジェットエンジンの排気音は初期の頃に比べると大幅に低下しています。その理由は、排気音が排気速度の8乗に比例するのに対し、推力は2乗にしか比例しないという性質を利用して、直径が大きく、排気速度の小さい、ターボファンエンジンが開発され、使用されているからです。一方、圧縮機の音は、エンジンの回転数の6乗に比例するのですが、回転数はそれほど低下しておらず、着陸時や、地上滑走時にはまだかなり耳につきます。圧縮機は、回転する翼列と静止翼列とが交互に流れ方向に並んでおり、前後の翼列の干渉により、正弦波的な、「キーン」という音を出します。地上のターミナルの近くではエンジン出力は小さいので、排気音はほとんど聞こえず、圧縮機音が聞こえるのです。着陸態勢に入った飛行機も、前方に圧縮機音を放射するので、これも「キーン」という音になります。しかし、地上でも滑走路の近くで離陸する飛行機の音を聴けば、「ゴー」という排気音が聞こえるはずです。

藤田肇(日大)