日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (069)

Q:

我が家とお隣との間の壁の遮音性能はどのような測定をしてどんな評価をするのですか。また,それらには基準値のようなものがありますか。

A:

建物に使われる材料や壁構造の遮音性能は、実験室において測定され、『音響透過損失(TL又はSound Reduction Index)』で表されます。この測定方法はJIS A 1416やISO140/3として規格化されており、実験室の大きさ、試験材料の面積・取付方法、音響測定の方法などについて細かな規定がされています。音響透過損失は、壁構造としての評価や材料自身の性能の善し悪しを判断する資
料になります。音響透過損失は1/3オクターブバンドごとの周波数帯域別に測定され、値は大きいほど遮音性能が良いことを示します。材料のカタログなどのデータには通常、この値が表示されています。一方、これらの材料や構法によって構築される実際の建物についての遮音性能では、『室間音圧レベル差(D)』という量が測定されます。一方の部屋で発生した音が隣の部屋では何デシベル低くなるかで遮音性能を表す測定量です。この測定方法はJIS A 1417やISO140/4として規格化されており、音源の種類、マイクロホンの位置などについて規定されています。オクターブ又は1/3オクターブバンドごとの周波数別に測定され、値が大きいほど遮音性能が良いことを示しますが、材料や構造だけでなく部屋の配置や施工の善し悪しまで含んだ、総合的な遮音・空間性能を表す量であるところが『音響透過損失』とは異なります。集合住宅などの住戸間の界壁は、建築基準法により遮音上有効な構造としなければならないことが規定されていて、表に示す値を満足しなければなりません。実際には、基準法に基づく告示による指定断面構造か実験室で測定された音響透過損失を基に遮音認定を受けた断面構造が適用されます。しかし、この遮音規定はあくまで最低の基準を示すもので、快適な生活のための好ましい水準を示すものではありません。逆にこれは社会通念としての義務のレベルを建築主にも、居住者にも示していることになります。従って、工業化住宅(プレハブ)性能認定基準や住宅都市整備公団や民間のマンション建設会社ではこれより1〜2ランク上の基準が目標とされています。なお、この基準値は、『室間音圧レベル差』に適用されるしゃ音等級(JIS A 1419)の曲線とは異なります。

矢野博夫(千葉工大)