日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (073)

Q:

アクティブコントロール技術について,学会等では目にすることが多いのですが,実際にはどのようなところでどんな風に利用されているのですか?

A:

アクティブノイズコントロール技術が実際の工業製品や施設に適用された事例が見られるのは,1980年代に入ってからと思われます。1980年代前半の代表的な適用事例としては,Cambridge大学らの研究チームによる14MWガスタービンの排気騒音低減やEssex大学らの研究チームによる船舶用ディーゼルエンジンの排気騒音低減があげられます。14MWガスタービンでは30Hz前後の低周波騒音が対象で,非常に音響パワーが大きかったため,排気塔出口に72個のスピーカをリング状に配置して2次音を発生したようです。1980年代後半から1990年代前半には,国内においても家庭用冷蔵庫のコンプレッサ騒音低減や自動車の車室内こもり音低減に適用されました。このほか,米国を中心に防音用イヤープロテクタに適用した製品も開発され,アクティブノイズコントロールの効果を聴感的にも手軽に体験できるようになりました。アクティブノイズコントロール技術が適用された事例が比較的多く見られるのが管路系のサイレンサへの適用です。1980年代後半から適用事例が見られます。既に,日本を含めて米国,スウェーデン等でアクティブサイレンサとして,商品化されています。空調設備への適用例では,コンサートホールの空調ダクトの途中に設置して,ダクト内を伝搬する空調機械の低周波騒音をアクティブサイレンサで低減し,高周波騒音を従来のサイレンサで低減するハイブリット方式が適用されている事例もあります。また,最近では道路騒音の低減を図るため,防音壁に適用しようとする動きも見られます。しかしながら,アクティブノイズコントロール技術が騒音低減の方法として適用されている事例は,限られております。これは,この技術が,コスト,適用範囲,信頼性等の点で課題を抱えているからと考えられます。現在,学会等で研究されていることが,これらの点を少しずつ解決し,将来は,各種の工業製品や施設において,騒音制御技術の基幹技術として本格的に定着して行くものと考えられます。

高橋 稔(日立プラント建設)