日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (077)

Q:

最近,テレビ番組やコマーシャルで,モンゴルの「ホーミー」という,一人で同時に二音を出す歌が放映されていますが,あれはどうやって歌うのですか?

A:

「ホーミー」はモンゴル西部に伝承される歌唱法です。ホーミーを本格的に習得したければ,現地の指導者について修練を積むのが最良ですが,ここでは「誰でもとりあえず二音歌唱ができるようになる」方法を書きます。
1)F3(174.6Hz)からG3(196.0Hz)ぐらいの高さで,できるだけ長く持続して,いわゆる「だみ声」で「い」の発音を行います。このとき,喉元を絞って「がらがら声」を出すのではなくて,腹筋と共に,首の後ろの筋肉や顎下の筋肉を堅く緊張させることで,喉に負担を与えずに,だみ声を出すようにします。
2)「う」の発音のときのように口先を尖らせつつ,歯と歯の間が指2本分ぐらいになるように口を大きくあけます。このとき,口の奥の舌の形は「い」のときの形状を保ちます。
3)舌を口腔内で立て,舌先を軟口蓋と硬口蓋の境目あたりの位置に持ってきます。このとき舌先と口蓋の間に少しだけ隙間をあけます。この段階で,だみ声の中から,口笛のような甲高いもう一つの音が聞こえてきます。うまく聞こえない場合には,舌の位置を少し前後にずらすか,だみ声の高さを少し変えてみて下さい。口笛のような音が聞こえるポイントが見つかるはずです。
4)だみ声の高さを一定に保ちつつ舌先を口先側に移動させると,先ほどまでより低い音が口笛のように聞こえるポイントが見つかります。逆に,舌先を口の奥側に移動させれば,より高い音が口笛のように聞こえます。このように舌の前後の動きを使えば,一定の高さのだみ声と同時に,口笛のような音色のメロディーを奏でることができます。ホーミー歌手達は,特に1と2を合わせた発音訓練(ガムと呼ばれる)を重視しており,習い初めの一年ぐらいは,この訓練だけが行われます。また,熟練してからも,毎日のウォーミングアップにこの訓練が用いられます。ホーミーのCDも市販されていますので,これらを聞きながら練習して下さい。

山田真司(大坂芸大)