日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (078)

Q:

人間にとって超音波は本当に安全なのですか。

A:

超音波の医用分野への応用は目覚しく,この質問も超音波診断装置に関するものでしょう。答えは「人間にとって安全であると考えられる範囲の超音波出力を用いているので安全」です。超音波の生体への影響は,加熱作用,機械的破壊作用と生理・化学作用が考えられます。このうち,生理・化学作用はまだ良く分からない面も多く,安全性に関しては熱と機械作用から検討されています。これらの影響を表す指標として,超音波が生体に吸収されて発生する温度上昇に関するTI(Thermal Index)と超音波の機械的破壊に関してキャビテーションの発生程度を表すMI(Mechanical Index)が用いられています。温度上昇に強く関係する超音波の強さについては,1977年に米国超音波医学会が「これまでIspta(音の強さの時間平均値のビーム内の最大値)100mW/cm2未満の超音波を照射された哺乳動物組織に有意な生体作用を見た報告がない」という見解を出しました。また,日本超音波医学会は1984年に「生体作用を示す最小強さは,連続波で1W/cm2,パルス超音波照射の場合Ispta =240mW/cm2程度」との報告を出しました。これらの見解を受けて超音波診断装置の超音波出力が規制されています。FDA(米国食品医薬品局)の規格では,診断装置の超音波出力はIspta =720mW/cm2 (ただし眼については50mW/cm2)まで上げることができることになっていますが,「必要最小限の超音波出力を使用し,できるだけ短時間で検査する」こと,またTIとMIを表示することが求められています。我が国では,超音波診断装置の安全性に関わる要求事項を定めた規格を国際規格に合わせて発行するとともに,法律(医薬品医療機器等法)で規格への適合性を求めています。一方,超音波診断装置とは別に超音波メスや結石破砕装置,白内障用装置など治療目的で用いられる超音波機器もあります。これらは超音波を患部に作用させるための装置ですので,診断装置とは安全基準に対する考え方が異なります。

佐藤宗純(電総研)