日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (079)

Q:

壁や床の表面に吸音材料を取り付けると遮音効果は高くなりますか。

A:

壁構造にグラスウールなどの吸音材料が挿入されるのをみて,ドアや壁に吸音材料を取り付けることによって住戸間の遮音性能が改善されるとお考えの方がよくいます。残念なことに,壁の表面に吸音材料を付加しても高い周波数の遮音性能が多少変化するだけで,遮音等級(一般に5dB程度)が変わるほどの変化はなく,よくて1〜2dB変化するにすぎません。これは,壁に数?程度の吸音材料を付加しても,その厚さに比べて波長の長い低い周波数の遮音性能の変化が少ないからです。また,床にカーペットなどを敷いた場合でも,軽いものを落としたり椅子をずったり引きずったりするといった軽い衝撃に対する床衝撃音性能は相当に良くなりますが,空気音の遮音性能はほとんど変化しません。しかし,上述のようにボード二重壁の空気層に吸音材料を挿入した場合は,中空層内の音圧を下げることができ,格段に遮音性能を向上させることができます。特に両側の面材(ボード)が音響的に独立に構築されている場合に大きな効果を発揮します。一方,受音側に十分な吸音材料を付加したとしても,その部屋の音の響きは短くなりかつ浸入音のレベルは極わずかに減少しますが,室内吸音が倍になったとしても室内音圧レベルは高々3dBの変化でしかありません。このような変化があれば,室内が音響的にデッドになったと感じることができるでしょうが,ベッドのある寝室のような部屋では,すでに吸音性が高いので極端に吸音性を高くすることは難しいでしょう。これらの事例から,壁や床の表面に吸音材料を取り付けることによる吸音付加は,この種の問題に関する最も効果的な方法にはならないということが分かります。

吉村純一(小林理研)