日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (082)

Q:

「音響インテンシティ」はベクトル量ですが、一般にスカラ量である「強さ」を表すのに使われる「インテンシティ」の呼び名はそぐわないのではないでしょうか。

A:

”Sound Intensity”の和訳として「音の強さ」が用いられていますが,この言葉では「音の大きさ」などと紛らわしく,最近では「音響インテンシティ」という用語が一般に用いられるようになりました。この量は,音圧と粒子速度との積(の時間平均)として定義される量で,音圧→電圧,粒子速度→電流とみなせば,電気系では電力に相当することになります。ご質問のように,「強さ(intensity)」というとスカラ量をイメージしますが,粒子速度がベクトル量ですから,音響インテンシティは本来ベクトル量です。その物理的意味は,音場内のある点に着目したとき,その点を通過する単位面積当たりの音響パワー(単位時間当たりの音響エネルギー)ということで,大きさだけでなく向きも必要です。ただし,平面進行波のように音波の進行方向が定まっている場合には,「音の強さ」を「音の進行方向に垂直な単位面積を単位時間に通過する音響エネルギー」と定義して,スカラ量として扱うこともできます。なお,近々に音響学会編の「音響用語辞典」の改定版が出版される予定ですので,参考にして下さい。

橘 秀樹(東大・生研)