日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (087)

Q:

超音波の強さを正確に測ることは,医用における安全性の問題などで重要であると思いますが,どのような測り方がありますか。また,その正しさはどのように保証されますか?

A:

超音波パワーや音圧を正確に測定する技術は様々な分野で必要ですが,特に医用診断・治療の分野では,人体への安全性が絡むため非常に重要です。
 超音波の「強さ」を表す一般的な量としてはパワーと音圧があります。パワーの測定法は,日本工業規格(JIS),国際電気標準協会(IEC)規格,日本電子機械工業会(EIAJ)暫定規格などに規定されています。これは「天秤法」とも呼ばれ,超音波が物体に照射されたときにDC的に発生する放射力を,精密電子天秤を用いて測定します。超音波振動子から放射される超音波パワーの絶対計測が可能なことから,世界各国の超音波標準で用いられています。医用で利用するパワー範囲である数mW〜数十Wの範囲で測定できます。天秤法以外に,超音波パワーを物体に吸収させ,発生する熱を測定する方法などもあります。 また,音圧測定はハイドロホンを用いて行いますが,そのためにはハイドロホンの感度が正しく校正されている必要があります。ハイドロホンの校正方法には,IEC規格で定められている相互校正法等があります。最近は,医用超音波の周波数領域(1〜20MHz)で精度良く音圧を絶対計測する方法として,レーザ干渉技術を利用した測定法が提案され,実用化されつつあります。これは,超音波による水中の薄膜の振動変位,すなわち粒子変位をレーザ干渉系で絶対計測し,この値から音圧を測定する方法です。薄膜をハイドロホンに置き換えることによって,感度の校正が可能となります。
 超音波パワーや音圧が本当に正しく測定されていること保証するには,測定器校正の「不確かさ」の値が国家標準としての「超音波標準」に結びついていることを証明するトレーサビリティ制度が必要です。このことは,我が国だけでなく,各国とも,重要な課題と考えています。また,国家間については,相手国の標準を認め合う相互承認の仕組みが必要になります。1999年に国際度量衡委員会(CIPM)の下に音響・超音波・振動諮問委員会(CCAUV)が正式に発足し,超音波標準についても,国際協力関係を一層密にしようとする体制ができあがりました。同年から相互認証を目的として,基幹となる量についての国際比較が行われています。パワーは8か国,音圧は7か国が参加し,2001年までに終了する予定です。
 日本は「超音波標準」の研究が遅れているため,今回は参加していません。将来的に何等かの形で諸外国との国際比較を行う必要があります。現在,通産省電子技術総合研究所(4月より「独立行政法人産業技術総合研究所」)において,「超音波標準」の確立を目指して,超音波パワー・音圧精密計測の研究を行っています。

菊池恒男(電総研)