日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (088)

Q:

音響透過損失の測定方法を規定するJISが改定されました。そこには測定をするための実験室にタイプ?試験室とタイプ?試験室というのがありますが,両者にどのような違いがあるのですか。

A:

昨年1月,JIS A 1416「実験室における音響透過損失の測定方法」が,建築音響関連JISの国際整合化に伴って,JIS A 1416: 2000「実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法」として改正されました。ISO規格とこれまでのJISとでは,音響透過損失の測定原理は全く同じですが,実験室の条件や具体的な測定手順,方法にかなりの違いがありました。
 両規格の概念の違いを簡単に言うと,JISでは音のランダム入射条件における材料及び構造の物性値的な値としての音響透過損失を測定しようとするのに対して,ISO規格では一般的な居室における実態的な音響透過損失を測定することが重視されていて,試験室も一般居室程度の大きさを用いることとしている点にあります。我が国ではこれまでのJISに基づいて,室容積150〜250m3程度の不整形の残響室が多く用いられていますが,ISO規格では50〜60m3の直方体形状の試験室が規定されています。改正されたJISでは,前者をタイプ?試験室(残響室),後者をタイプ?試験室として,いずれかの試験室を用いて測定する方法を記述することでISO規格への整合が図られました。
 また,整合化JISでは,測定対象とする試料以外から受音室に伝搬する,いわゆる側路伝搬音(例えば,音源室の壁,床,天井から受音室に伝わる固体伝搬音)をできるだけ低減することに重点を置いており,それには音源室と受音室とが接するすべての面を試料とするように構成するタイプ?試験室が有利であると言えます。しかし,タイプ?試験室は室容積が小さく,特に低い周波数帯域での拡散性を確保することが難しいため,音源の仕様(全指向性スピーカの使用)や音源を複数箇所に設置して測定を繰り返すことなどにより,試験結果の再現性を向上するように配慮されています。
 このように整合化JISでは,タイプの異なる試験室を用いる方法が併記されていますが,両試験室による測定結果を直接比較した例はあまり多くありません。これまでのところ,大きな違いは無いことが報告されていますが,試料の性能が高くなるに従って,側路伝搬の影響が大きくなること,またその影響の程度が測定試料に依存することなど,今後の詳細な検討に期待するところとなります。

吉村純一(小林理学研究所)