日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (091)

Q:

音響流とはどのようなもので,どのような応用分野があるのでしょうか?

A:

音響流は水晶風,音響直進流,音響2次流れとも呼ばれています。通常,流体中を強い音波が伝搬すると媒質流体の移動現象がみられます。また,静止流体中で物体が振動するときも,物体の周りに一定方向の流れが生じます。いずれも音響流といいます。
 いま,正弦波の音波を考えると,この音波の到来で媒質はある位置を中心に振動するだけのはずなのに媒質が移動するのは奇妙です。移動のメカニズムは後に述べるとして,この現象の初めての報告はファラディで,クラドニ図形における粉の動きの謎を調べているときでした。その後,クント管と呼ばれる音響管内での循環流をドボルザークが発見し,レイリーが理論解析しました。現在では振動する泡の周りの流れや管内衝撃波に伴う乱流的音響流などが研究されつつあります。
 さて,音波や流体中の振動は流体の密度,圧力,粒子速度といった物理量の組み合わせで表現されます。音波による1次の物理量の変化がたとえ正弦的であっても,2次の変化分まで含めた質量保存式を時間平均すると零にならない項が出ます。これは質量の流れ,すなわち,音響流の発生を意味します。これが2次効果による流れといわれるゆえんです。このことは,ダイオードに正弦波電流を加えても,整流電流には直流成分が含まれているのと似ています。
 次に,流体の式と音場の式から,音響流の駆動力を調べると流体の粘性と音場の空間的特性,特にインテンシティが重要な役割を果たしていることが分かります。例えば,一つの発生機構として直進型の音響流では,音のエネルギーの一部が流体の粘性によって散逸され,音場特性に依存した駆動力が生じます。その結果,音の伝搬方向に媒質が移動すると考えられます。
 応用としては,1) 駆動力が音場特性に依存するので,マイクロマシンと関連して高集束音源で局所に,短時間に,極細流を発生させること,2) 音波の透過する隔壁の向こう側に非接触で流れの惹起,攪拌,熱伝達促進等をさせること,3) 媒質流体の外部管路へのポンプ作用,4) 熱音響エンジンでの作業媒質としての応用などが考えられます。なお,音響流は音波の非線形効果のひとつですから,我々の観測にかかる程度の流速になるには,ある程度大きな振幅の音波が必要です。詳細は本誌52巻3月号(1996),三留秀人編の小特集をご覧下さい。

松田和久(都立小金井工業高校定時制・理科)